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21-1.決意
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ああ、ああ。
まさか……まさか、とは思ってはいたのだが!
あの極力無表情無愛想でいたセリカ、が。
まさか、この俺様、クローム=アルケイディスを想ってくれてたと知ることが出来。
この上ない幸せを、今俺様は噛み締めている!
(セリカと両想い、セリカと両想いぃいいいい!!)
だが、キスは額だけで我慢した。
その理由は、当然まだ俺様の体重と体型が元に戻っていないからだ。
想いを通わせ合うのも、その目標達成後のつもりではいたが、不意打ちは仕方がない!
それと、今。
今、の状況を俺様は声を大にしてチェスト達に自慢したかった!
「えへへ~、えへへへ~~」
気絶から目が覚め、想いを通わせ合った後のセリカが可愛いすぎた!
実は錬成後の、かなり初期の段階で俺様のことを好いてくれていたらしく。
けど、それは細胞に組み込まれた元の俺様の姿だ。だが、太ったままの俺様でも好印象は受けていたそうで。
自分の寿命もだけど、痩せさせたらあの俺様に会える! 頑張ろうと意気込んでたけど、腑抜けな態度を見せないためにも、と自然と無愛想なセリカになっていたらしい。
だが、今はどうだ?
俺様の膝上で、まるで子猫のように愛らしくすり寄ってきて、これまた愛らしい笑顔で俺様に全力で甘えてきていた。
(く、これが本来のセリカとは言え!)
なんて愛らし過ぎるんだ!
なんで、もっと早く知っておけば!……いや、俺様は気持ちを自覚するのが遅かったし、チェストに言ったように体型などが完璧に戻ってから伝えるつもりでいたのだ。
だが、今回のきっかけがなければ、セリカとは良き相棒のような関係でしかいなかっただろう。
結局は、シャインが導いてくれたのだから、良しと思わねば!
「セリカ。少しいいか?」
「ん~? なーに、クロームぅ」
そんな猫のように愛らしく名前を呼ぶな!
しかも、嬉しそうに笑顔全開で俺様を見上げるから口づけしたくなる衝動を抑えるのに必死だった。
が、呼び掛けたのは俺様なので、本題に移ることにした。
「シャインに、俺様達のことを伝えに行こう。今更かもしれないが」
「あ、そうだね!」
と言うことで、セリカは俺様の腕に自分の腕を絡ませながら抱きつき、一緒にシャインのいる地下室に向かうことにした。
到着すると、シャインは自分の魔石をチカチカと光らせた。
【成功したようですね?】
「うむ。世話をかけたな、シャイン」
【創造主はともかく、セリカにはしょっちゅう惚気られました】
「ちょ、シャイン!?」
【事実だろう。セリカ?】
ふむ。セリカには敬語ではなく、少し俺様に似た口調で会話をしているのか?
やはり、親子? だからか?
まあ、そこは気にしないが。今後もこの三人で過ごす日々は変わらない。
例の、ビーツやディスケットの件は一向に解決に向かっていないが。
「セリカ、シャイン」
【なんでしょう?】
「なーに?」
「俺様や、シャインの研究の邪魔をしてきた連中。ギルマス達が調査にあたっているが、俺様の体もだいぶ元通りになってきた。今なら協力出来るかもしれない。表面上はいつもどおりの生活を続けるが」
「あ、殺しちゃダメって言われた奴?」
「だから、お前の発想は時々過激過ぎだ!」
あれは、無愛想抜きに本気で考えていたのか……。
だが、今のセリカを知れば、俺様に害を成す連中のことを排除しようと思う気持ちが強いのはよく理解出来た。
「んー。チェストさん達から報告ないけど、どう協力するの?」
「ディスケットについては、俺様を妬んでいるからな。だが、どう言うルートで不正のエーテル生成液を手に入れたかはわからん。しかし、エーテル生成液の不当な製造は国家犯罪に繋がる。死刑は免れんな?」
が、扱った俺様も俺様なので、何かしらの刑罰には問われそうだが、今ここで口にしたらセリカを盛大に怒らせるだけで済まないだろう。
ひとまず、電報でギルマスを呼ぶことにして、今後の対策に俺様も加わると自己主張することにした。
「じゃ、クローム。体つきはほとんど戻ってきてるなら、次は鍛える方向でいこうよー」
「鍛える?」
「今のクロームだったら、体力も有るし。いい体つきになると思うよ?」
「……セリカ」
俺様ははしゃぐセリカの肩に手を置き、少し真剣な口調でダメ出しを告げることにした。
「……それは暗に俺様を誘っているように聞こえるが?」
「ふぇ!? そ、そんなつもりで言ったわけじゃ!!」
【……我でも、創造主と同意見だ】
「しゃ、シャイン!?」
「まあ。ポーション作り以外堕落した生活も、お前と過ごすのであれば意味はないからな? であれば、鍛える方面もいいだろう」
「……むー」
むくれた顔も愛らしいが、ツンツンとつついてから地下室を後にして、とりあえず八つ時を過ごすべく二人でパンケーキを作ることにしたのだった。
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