満腹マッドサイエンティストはガリガリホムンクルスを満足させたい!〜錬金術の食事を美味いと言わせたいだけのスローライフ〜

櫛田こころ

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15-2.有頂天から落とされる(セリカ視点)

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 ★・☆・★(セリカ視点)






 びっくりした……びっくりした!!

 マスターがあんなに声を荒げるだなんて思ってもみなかったから。


(ちょっと冗談のつもりで言ってみただけだったのに……)


 まさか、あんなにも必死になって叱られるとは思ってもみなかった。

 けど、マスターに害を与える人間達は私にとっては敵でしかないから、亡き者にしたいと思ったのは至極当然。

 だけど、殺人はどんな理由にしても罪でしかないから、マスターは私を犯罪者にはしたくないとハッキリ言ってくれた。

 それは……素直に嬉しかった。

 ホムンクルスは、いわば創造主の奴隷でしかないのに、マスターはそう思っていないみたい。

 夕飯まで少し時間があるので、えへえへと上機嫌になりながら、私はシャインのところへ向かった。


「シャイン~」


【TEST

 TEST

 右の培養管に素材名『きくらげ』を90%まで作成完了

 左の培養管に素材名『糖質ゼロ麺ーうどんー』を85%まで作成完了

 続けますか?

 YES/NO?】



 シャインはまた今日の夕飯に使う食材を錬成していた。

 けど、今日は話を聞いてもらえそうだったので、私は食材が出来上がるまで近くに立った。


「シャイン~シャイン!」

【上機嫌だな、セリカ】

「うん。マスターがね~、私が犯罪者になるのが嫌なんだって~」

【もう少し具体的に説明しなさい。その話だけでは、魔導具であれ恐怖に駆られるが?】

「あ、うんと」


 マスターを逆に亡き者にしようとしてた人間連中を殺してもいいと、つい口にしてしまったのに対して、マスターが猛反対してくれたことを細かく説明した。

 すると、シャインは人型でもないのにため息のような間を空けてから話し出した。


【我はともかく、あなたは人型。創造主が気にかけて当然だろうな? 娘のようなあなたが殺人を犯せば、いい気分にならないはずだ】

「娘……まあ、そうだよね」


 マスターは娘とは違うとは言っていても、娘のような存在と言っても過言ではない。

 まだ生まれて一年も経ってはいないが、身体は十六歳くらい。中身も同じくらい。

 大人ではないが、子供とも言い難い。

 こんな私が、マスターの横に立っていいのかなとも思うけど。マスターを想う気持ちは他の人間達には負けない!

 絶対お嫁さんの立ち位置には、私が枠に入るんだから!


【ところで、笑顔は見せられるようになったのか?】

「……それは正直わかんない」


 シャインの前では素直に吐露出来るのに、マスターの前では笑顔ができているかわかんないし、代わりにスキンシップとして髪を撫でさせてもらっている。

 そんな時のマスターは、照れているのかとても可愛らしい表情にはなっているけれど……チョコレートパフェを初めて出した時のようにはもうならない。

 それに、あの時急に出て行ったあと、どうして急に落ち着いた雰囲気になったのかもわからない。

 もしかして、シャインに相談に乗ってもらったんじゃと、私は行き着いた。


【セリカ。であれば、もう少し創造主との距離を縮めるべきだ】

「うん。……ねえ、シャイン。マスターがあなたに何か相談したりしなかった?」

【なんのことだ? 創造主はあまりこちらに来られないので】

「……そう」


 やっぱり口止めさせられているのか。

 けど、いったい何を相談したのだろうか?

 私のこと? もしくは別のこと?

 気にはなるけど、シャインの意志は固そうだからきっと答えてくれないだろうし。

 かと言って、マスターの方もきっと答えてくれないだろうなあ。悔しいけど、三ヶ月の差とは言え、マスターとシャインとの信頼関係は揺るぎないものだから。


【それとスキンシップと言っていたが、具体的に何を?】

「えと……褒めるタイミングで髪を撫でさせてもらってるだけ」

【それはスキンシップと言わないと思うが?】

「ま、マスターの前だと、なんか素直になれないの! ハグはまだだけど、キスとか髪に一度しかしてないし!」

【……またすればいいじゃないか。唇じゃないのだから】

「むーりぃいいい!」


 あの時は、勢いに任せてだったし、マスターが笑顔を見せろとか言ったから、つい嬉し過ぎて気分が高揚してしまったのもある。

 だから、素面でしろと言われても、はいそーですかだなんて言えない!

 絶対、絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対ぜーったい、爆ぜる、死ぬぅううううう!!!!


【……勢いで出来たのに、何故普段は無理なのか理解しかね】

「女心は複雑なの!」

【男性も変わらないとは思うが……まあ、いいだろう。そろそろ作成が完了するが、持って行くか?】

「う、うん」


 もうそろそろ夕飯を作る時間が近くなってきたので。

 シャインから食材を受け取り、パパッと八宝菜と焼うどんを作ってからマスターを探しに行ったら調合室で大量にポーションを作っていた。


「これだけあれば、かなり稼げるぞ!!」

「納期まで、まだ時間があるのに?」

「うむ。調査はギルマスメインで動くだろうから、二、三日後に取りに来てもらえるようにチェストには電報を届けよう」

「……そう。ご飯出来たよ」

「ああ、食べに行くぞ!」


 かつてないほどの集中力で、体力も気力も落ちてるマスターにはしっかり食事をとってもらい。

 二日後に来たチェストには『作り過ぎ!』と呆れられる結果にはなったが、まあ喜ばれたのだった。
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