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13-1.バックランジ
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「……ふぅ」
今日の便通も痛みがなく、むしろスッキリした出で終わった。
昨日の晩だけは普通に近い食事をしたと言うのに、新しく追加した運動が体循環を円滑に体から出て行く。
時々痛みはあるが、初回から比べればだいぶ改善された!
体重がいくらか戻ってしまったが、今日はさらに運動をがんばらねばならない。
が、朝食を済ませてからセリカが少し改善すると言い、外に連れ出された。
「腹筋もいいけど、バックランジと言う運動で足腰を動かそう」
「バック……ランジ?」
「見てて」
ズボンスタイルに着替えてるセリカは、腰に両手を当てて、脚だけを後ろに伸ばして膝を地面すれすれまで曲げた。それをまた前に戻して綺麗に立つ。次に、反対の脚も同じように。
それを20回繰り返したら、セリカは軽く息切れていた。
「昨日よりは体の負担は少ないと思う」
「ふむ。昨日のように腹が捻りそうになるとかはないか?」
「ウォーキングをするように、体に負荷があるだけだと思う。マスターの場合はバランスが取れにくいかもだけど、やってみて」
「わかった」
まずは腰に手を当てて、しっかり立ち。
次に、どちらの脚でもいいので後ろに伸ばして膝が地面につくすれすれまで曲げるのだが。
昨日の運動よりは、たしかに痛みも辛さもマシではあったが。……自分の重さがかかるとは言え、辛いものは辛かった!
「頑張って、とりあえず20回」
「ふぎぎぎ!!」
「前にゆっくり戻したら、反対」
「ふぐぐぐ!!」
「次、反対」
「ぬおおおおお!!」
そして、たったの20回終わらせただけなのに、ウォーキングを30分くらいやった息切れを起こしてしまった。
「た、たしかに昨日のよりは楽だが……!」
「はい、40秒経過。すぐ始める」
「は、早くないか!?」
「とりあえず、あと4セット」
「うぬぬぬぬ!!」
好いていることに変わりはないが、やはり辛辣過ぎるぞこのホムンクルスは!!
だが、俺様の別の目的のためには見栄えをよくしなくてはいけないので、やるしかない!
とにかく、すべて終わってから汗だくになった俺様にセリカは冷たいアイスティーを出してくれた。
「お疲れ様」
「昨日に比べれば、たしかに楽ではあるが……」
「あれは、もう少しマスターに筋肉がついてからやった方がいいと思う」
「……体重で言うとどれくらいだ?」
「……75」
「く……!」
25キロ以上あるではないか!
頑張らねば……とアイスティーを煽っていると、門の方から掛け声が聞こえてきた。
「クロ~ヤッホー!」
「……チェスト? ああ、そう言えば納品時期か」
「僕もいますよ、クローム君?」
「……誰?」
「生産ギルドのマスター!?」
な、何故、ギルマスがここにいるのだ?
何故、チェストに同行しているのだ!?
痩せてから会いに行くつもりだったのに、と焦ってももうこちらの姿は見られているので、ガクッと首を曲げるしか出来なかった。
「ふふ。本当に見違えてしまいましたねー?」
「これでもだいぶマシですよ~?」
「なるほど。それは一度見て、ぶふ、見たかったですが。隣の彼女が?」
「……セリカです。はじめまして」
「はじめまして。僕はアーク=ディオン。チェスト君やマールドゥ君の上司になる生産ギルドのギルドマスターを務めてますよ?」
「……何故、ここに?」
「いえ。今のクローム君の様子が気になっていたのと、報告が少々」
「報告……?」
ギルマスが俺様にわざわざ?
何か、落ち度があったとすれば納品しているポーションについてだろうが。俺様とセリカのポーションは出来がいいので問題がないとこの前も言っていた。
であれば、可能性としては!
ギルマスは俺様の考えを見透かしたのか、小さく笑ってから懐から愛用のタバコを取り出して火をつけた。
「チェスト君達から聞きましたよ。君に不正のエーテル生成液を売りつけた相手がうちのギルドにいるかもしれないと」
「チェスト、話したのか?」
「調べものしてた時にうっかり聞かれちゃって~」
「吹聴はしませんよ。クローム君はうちのポーションの中でもトップクラスのを納めてくれていますしね。その大事な取引相手を侮辱することはしません」
「……であれば。検討がついた、と?」
セリカがギルマスに問うと、ギルマスはタバコの煙を細く長く吐いてから頷いた。
「少し長くなるので、中に入らせてもらえませんかね?」
「む。今運動の後になるから、ひと風呂浴びてくる。セリカ、茶かコーヒーを二人に」
「わかった」
俺様は手早く風呂に入って、汗を流し。着替えてから食堂に行くと、ギルマスはセリカに色々質問をしているところだった。
「なるほど。適度な運動だけでなく、食事で彼をあそこまで痩せさせたのですか?」
「はい。私を生み出した当時のマスターはそれはもう醜かったので」
「ね~? オークも真っ青な体型だったし」
「好き勝手言いたい放題だな!」
「あ、お帰り~」
セリカから今までの俺様への減量化生活を根掘り葉掘り聞き出したかもしれないが、まあそこはいい。
問題は、エーテル生成液を俺様に売りつけた相手だ。
セリカから冷たいコーヒーを出してもらってから、ギルマスはまたタバコの煙を吐いた。
「僕の内部調査で、ヒットする人物は数多くいましたが。チェスト君達の話を詳しく聞いた後で、該当する人物が出てきました」
「……誰、なんだ?」
自分で言うのもなんだが、俺様はこの性格ゆえに敵は国内外に数多くいる。
であれば、俺様の錬金術師としての研究を邪魔する輩だっていてもおかしくはない。
ギルマスは俺様の表情を見てから、もう一度タバコを深く吸って煙を吐いた。
「ビーツ=エクリプス君。この名前に聞き覚えは?」
「「ビーツ!?」」
「あんの、大人し過ぎる販売員がクロに売った生成液をすり替えたの!?」
「そうなんですよね~?」
「ビーツ、が」
大人しくて、愛想笑いもぎこちなく、気弱な表情しか見せない男。
そんな奴が、俺様に売ったエーテル生成液をすり替えた犯人なのか?
とても、信じられなかった。
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