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5-1.料理と錬金術

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 ★・☆・★







「セリカ! これはなんなんだ!!」


 セリカがわずかに感情を露わにした翌日の昼。

 日課のウォーキングなどを終わらせてから、昼食になったのだが。

 出された茶色いスープがかつてないくらい美味かったのだ!

 ポタージュだというのはわかるんだが。


「ん。それはキノコ……マッシュルームのポタージュ」

「ぬ! こ、こここ、これがキノコだと!?」


 全然キノコの食感もないので気づかなかったが。

 濃厚な旨味にコンソメの味わいが深く、なんとも言えない幸福感に包まれたのだが……これがキノコ?

 めちゃくちゃ美味いではないか!


「シャインと相談して、マスターの身体にはやはり定期的にキノコを摂取しなければいけないと分かったから。……食べやすい方法にしてみただけ」

「これが……か?」


 キノコの影も形もないくらい、ポタージュ状にすり下ろしたような茶色のスープ。

 たしかに美味いが、とてもキノコだけとは思えなかった。


「キノコと玉ねぎを適量鍋で煮て。冷ましたら、このミキサーと言う道具で破砕したの。これで液状になるまで破砕したら、また鍋で煮て牛乳やコンソメなどで味付けしただけ」

「その道具!」


 俺様が異世界召喚を使用した時に、召喚をしてしまった偶然の産物!

 使い勝手がよくわからなかったのだが、まさか調理道具だとは思わず。

 綺麗に洗浄してあるのだが、これではさい……と言ったが。

 具体的にどうするのだと言うのだ?

 キノコの影も形もない状態にしたというのは……まさか、砕いたのか?


「これがあったお陰で、ポタージュが簡単に出来た。マスターが召喚したものと言うのは、魔力の残量でわかった」

「そ、そうか。そんな使い道があるとは思わなかったが……」

「けど、美味しかったでしょ?」

「う、うむ……。美味かった」

「じゃあ、スープのローテーションに入れておく」

「ああ、わかった」


 表情にはあまり出ていないが、なんだか生き生きとしているような?

 昨日いくらか、俺様の口から感情を露わにしろと言ったせいか、俺様に辛辣に当たる態度がいくらか緩和されたような。


(……いやいやいや、まさか)


 創造主ゆえに、嫌われてはいないと思うが……まさか、な?

 あの麗しい美貌を持つホムンクルスが、まさか俺様に好意を抱いているとはとてもだが思えない。

 開口一番に、今もまだ醜いままの俺様を醜いと言い切ったあいつだし、まさかまさかそんな。

 だが、雛の刷り込みという言葉もあるし、自分の寿命が縮むのを回避するためだけに、俺様にここまで尽くしてくれるのか?

 いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやそんなまさか!

 けど、悪くないと思う俺様のこの感情はなんだぁあああああ!!!!!!


「……俺様はポーションを作ってくる。お前はどうする?」

「ん。助手として参加したい」

「では、調合室に来い」


 シャインで生成も出来なくはないが、それは錬金術師として堕落し過ぎた生活を送るため。

 こっちのポーション作りに関しては、腕が鈍っては食材を確保するための生活費などが補えない。

 質が良くても効能がイマイチではいけない。

 だから、手作業で行うのだ。


(と言っても、刻んだりした材料を、錬金術用の鍋に入れて混ぜるだけだがな?)


 調合室に着いたら、俺様はまずセリカにどこに何の素材があるとかを教えた。

 この二ヶ月では、家事全般を頼んでいたゆえに、教えられなかったからな?


「これが錬成前の状態。これらを混ぜることによって、様々な効能のポーションが出来上がる」

「ん、覚えた」

「ハイレアポーションはいきなり無理だろうが、普通のポーションを作ってみるか?」

「ん」


 薬草をちぎったり、包丁で細かくしたり、乳鉢ですりつぶしたり。

 無言で作業に集中して、錬金術用の鍋にそれぞれ入れて魔力を注ぎ込む。


「ん、出来た?」

「どれ……」


 教えた通りに出来てるはずだが……と鍋の中を覗き込んでみれば。

 たしかに、初級ポーションの回復薬が出来上がっていた。


「うむ、いい出来だ。次は中級ポーションを大量に作ろう。明日チェストが取りに来るからな」

「わかった。頑張る」

「うむ」


 高級ポーションを作ってもよかったが、明日の納品分はどうやら中級ポーションが多いようだ。

 前に、幼馴染みで業者になっているチェストに聞くと、ランクの低い冒険者達には高級ポーションに手が届かないので、逆に中級ポーションを大量に手に入れたいからだそうだ。

 特に、この天才的錬金術師クローム=アルケイディスのポーションは効き目がいいと評判が高いからな!

 中級でも、良い値で売れるし蓄えは十分ある。

 とは言え、セリカが生まれる前も以前も、シャインで生成する食べ物の量は、実はかなりいる。

 二つ同時に作れるのは、効率がいいためとどちらかを補うエーテルの作用を利用して。

 ただし、二ヶ月前まではセリカを生成するのに、食材以外にも異世界レシピやハイエルフの髪の毛に俺様の髪の毛だったりと色々使ったわけだが。


 それを除いても、今セリカがメインで生成してるシャインの食材の量はかなり多い。

 その分、食べるのは主に俺様だが、どういうわけか今朝からセリカも食べるのに加わると言い切ったのだ。

 美味しいものを、分かち合いたいとかなんとか。

 というわけで、セリカにも稼ぎを手伝ってもらえると非常に助かる。

 俺様が楽をしたいわけではないぞ!

 チェストの頼んできた量が多いせいだ!


「……料理みたい。楽しい」

「そうだな。料理も錬金術の一種だとも言われているが」

「なら、マスターも料理が出来るのでは?」

「出来なくないわけではないが……どうも、お前のようにはいかなくてな」

「なら、お菓子作りから始めればいい」

「……お菓子?」

「おやつのふすまクッキー、一緒に作ろう」

「クッキー、だと!」


 俺様のおやつランクトップテンに入る食事ではないか!

 が、アイス同様に食感はいくらか違うだろうと予想は出来るが、それでも文句は言えない。

 これも、俺様が元の美しい姿に戻るため!


「よし、急ぐぞ!」

「急いだら質が落ちるんじゃ?」

「む。なら、普通に作ろう……」


 とにかく、どんなクッキーなのか楽しみで仕方ない!
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