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第187話 安堵
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仕様がないけれど……実に情けない姿を見られてしまった。
他人ではなく、しかも近しい存在らに。
その片方である透明人間の乃亜さんにはクスクスとずっと笑われてしまったのだ。
翠羽は精密検査を受けるのに、今は病室にいないので堂々と出来るから。
「……ふふふ。蘇芳の宿主も形無しですよね」
「…………そんなに笑わないでください」
「無理を言わないでくださいよ。小さい頃から知っている国綱さんの子どもっぽい姿を見れたんですから」
たしかに、両親が生きていた頃からの知り合い……以上に、親戚の存在と変わりない関わりだった。だから、擬似的ではあるだろうが、乃亜さんにとって僕は甥っ子のような存在かのしれない。
「……とにかく。翠羽が無事でよかったです」
また喪う。
そんな覚悟を迫られた気持ちになってしまうくらい……あの激戦の中で、それは思ったが。
終わった途端の出来事だった。だから、余計に焦ってしまい……目覚めてくれた時は、安堵だけで済まなかった。
反動で泣きじゃくるくらい……仕方がなかったと思いたい。
「そうですね。どうやら、完全に記憶が戻ったようですし。魍魎からの危機も脱したと判断していいでしょう。……被害は、ある意味最小限で済みましたが」
「……場合によっては、高校は転校させます」
「そこは本人の意思を尊重しましょう」
「ええ」
決めるのは、翠羽。
もう彼女はただの子どもではないのだから。
他人ではなく、しかも近しい存在らに。
その片方である透明人間の乃亜さんにはクスクスとずっと笑われてしまったのだ。
翠羽は精密検査を受けるのに、今は病室にいないので堂々と出来るから。
「……ふふふ。蘇芳の宿主も形無しですよね」
「…………そんなに笑わないでください」
「無理を言わないでくださいよ。小さい頃から知っている国綱さんの子どもっぽい姿を見れたんですから」
たしかに、両親が生きていた頃からの知り合い……以上に、親戚の存在と変わりない関わりだった。だから、擬似的ではあるだろうが、乃亜さんにとって僕は甥っ子のような存在かのしれない。
「……とにかく。翠羽が無事でよかったです」
また喪う。
そんな覚悟を迫られた気持ちになってしまうくらい……あの激戦の中で、それは思ったが。
終わった途端の出来事だった。だから、余計に焦ってしまい……目覚めてくれた時は、安堵だけで済まなかった。
反動で泣きじゃくるくらい……仕方がなかったと思いたい。
「そうですね。どうやら、完全に記憶が戻ったようですし。魍魎からの危機も脱したと判断していいでしょう。……被害は、ある意味最小限で済みましたが」
「……場合によっては、高校は転校させます」
「そこは本人の意思を尊重しましょう」
「ええ」
決めるのは、翠羽。
もう彼女はただの子どもではないのだから。
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