【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第183話 だったもの

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 この記憶らしきものは……私に何を伝えたいのでしょうか。

 過去です。

 記憶でしかありません。

 ですが、実際に起きたことでもあります。

 あの男も去って行った後に残ったのは……血の海のように広がる血溜まりだけでした。この血は、私のものだったのでしょうか?


『……気持ち悪いですね』


 匂いも感じず、触ることも出来ませんが……いいものではありません。

 とは言え、ここから私の意識が浮上することもありませんでした。

 ここから、私はどうすれば良いのでしょうか?

 そう思っていると、ぐにゃりと景色が歪んでいったのです。


『……き、た』

『……俺らが役に立つんだね』


 変わった先にいらしたのは……むーちゃんさんと琥珀こはくさんでした。

 消える時にもあった、半透明でいることから……存在であることを、誰かに許可されたのでしょう。

 誰に?

 なんのために?

 あの時は、私や国綱くつなさんのためとおっしゃっていましたが……私達のこれまでを、見越して?

 お母さんが……そのために、用意していた?

 時蟲ときむしを受け継ぐためとは言え……何故そのようなことを。

 まだ受け継いで、日が浅い私では……わかりませんでした。


翠羽みはね……!】


 ふいに、呼ばれた気がしました。

 大好きな、愛しい方の声です。


『国綱さん!』


 私は声のする方へ、急いで走りました!
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