【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第179話 同じでも違う

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 警察病院に移っても、翠羽みはねは目が覚めることはなかった。

 わざわざ、女医にも診察してもらったのだけれど……身体的な異常は特に見受けられないらしい。


「ええ。身体の異常は特にないわ。おそらく……精神……魂の方に異常があるようね」

「……彼女が目覚めることは」

「確証はないけれど……時蟲ときむしの文献は、あなたの蘇芳すおうと同じくらい少ないわ。だから、いつとまでは言えないの」

「……そうですか」


 枕元で、手を握っていることしか出来ない。

 僕は……こんなにも無力だったのか。

 彼女への危機が去ったと思ったのに、これでは元通りじゃないか。

 幽体の時と同じように、必死に探しまくった……あの時と同じだ。


「けど。苦しんでいると言うことは、内側では抵抗していると思う。希望はゼロじゃないわ」

「……ありがとうございます」


 その言葉があるとないとだけでも……全然違う。

 僕は、翠羽の手をしっかり握って……少し呪を唱えた。

 導き手は、昔だったら母親の紅羽くれはさんだっただろうけど……今は僕しかいない。

 むーも、琥珀こはくも存在しないから……もう、僕だけしかこの子の『大事』にはなれない。

 だから、しっかりするんだ。国綱くつな……!
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