【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第173話 事態把握

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「いやはや、お疲れ様でした」


 乃亜のあさんはパトカーの前で立っていらっしゃいました。どうやら、あの男性体については乃亜さんが関係しているようです。


「あの思念体のようなものは……例のぎょくが?」

「ええ。私の懐からいきなり飛び出して、あのように」

「そうなんですね……」


 もう消えてしまいましたが……あの男性体は魍魎もうりょうの幹部だった存在の思念体だったそうです。

 だからこそ、私や国綱くつなさんの未来のひとつを奪っていたと口にしたのでしょう。それよりも、ここ一帯の被害を抑えることが出来て良かったですが。


「確認すべき事は、本来なら多数ありますが……この程度の被害で、まだ済んで良かったですよ」


 乃亜さんの言葉に、もう一度振り返りましたが……高校の校舎は、すべてではないですが三分の一程度は崩壊していました。

 死傷者は、実質先生方の存在が屠られた事ですが……それでも、生徒はほぼ無事です。自宅にいるはずですから、被害はほとんどなかったでしょう。

 複雑ですが……校舎が再建しても、私は再びこの学校に通っていいのでしょうか。それについて、私は胸が痛みます。

 ただ、その痛みなのですが。

 苦しいと思った瞬間に、ドクンと……強い鼓動が、私の中から動き出しました。

 耐えきれずに叫び、私は抱き止めてくださった国綱さんの腕の中で……倒れてしまいました。
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