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第170話 最後の意識
しおりを挟む(……ああ、これで)
役に立てた、あの子らのために。
最後に、成すことが出来た……今一度冥府に旅立つ前に。
あの男の思惑を……止めることが出来た。あの子に直接的な被害を起こす前に、止められた。本当に良かった。
だから……本当の意味で、この身体が朽ちていくのは仕方がない。
「……あなたは」
あの子に声をかけられても、『俺』は答えられなかった。
伝えられる口が無かっただけではない。もう、意識などが朦朧としていて、言葉を紡ぐ余力がなかったのだ。
だけど……せめて。
笑顔だけではいようと微笑んでみると。
あの子は……驚いていたが、頷いてもくれた。
それだけでも……嬉しい。
役に立てた事実が嬉しくて……そこでもう、意識が途絶えたのだった。
次に見えたのは、暗い昏い……世界の底だったから。
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