【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第162話 だが、させない

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 来た……。

 来た来た、来た……。

 来てしまった。あの男。

 あの男が『産まれて』しまってから、世のことわりは様々に変わってしまった。

 なすすべもなく、急激に成長したあの男に立ち向かった……時蟲ときむしの先代は、男の仕向けた差し金のせいで命を落とした。

 娘のあの子に、能力は全て与えたが……あの子はまだまだ幼い。使い方がまだまだ未熟。

 だからこそ、万が一の保険は残した。

 だが、それらも使ってしまった上での現状がこれだ。

 またもや、なすすべもない状況なのか。

 いいや、いいや。

 させない……させない。

 我らがそのようなことをさせない。

 残滓でも力を受けた……魍魎もうりょうだった我らが、あの子のために動く。

 消えていきそうな意識の中から、あの子が残してくれた『ぎょく』を介して……助けるのだ。

 あの、忌み嫌われた男の好き勝手にはさせない。

 我らが助けるのだ。

 刑事の懐にある玉を飛び出し、我らは『力』となりて……あの子の前に降り立ったのだ。
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