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第161話 絶望手前
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あの男です。
屍鬼が崩れ去っていき、校舎だった建物の残骸の上に……いきなり現れました。
警察署の牢屋では幻影のようでしたが、あれは明らかに違います。
肉体が存在し、魂を宿し。
こちらを見下すような、失礼極まりない意思を持つ目を向けてきています。白虎さんの背にいる、私や国綱さんを見ても、怯えも恐れもしていません。
『つまらない』
そのような表現が正しいのかは分かりませんが、感じられる感情はそのようなものしか分かりませんでした。
「……くく。屍鬼も昇華させるとは、ガキのくせに……お前らやるなあ?」
肉声ははじめて聴きましたが、酷く耳障りの悪いものです。叶うことならこれ以上聞きたくありませんが、状況からいってそれは無理でしょう。
「……何がしたい」
国綱さんの声が届いているのでしょう。男は顔を上げると、意外にも整った顔つきを嬉しそうにゆるめていました。
「何が? 壊したいだけさ。何もかも」
そうして指を鳴らすと、一瞬で大きなスズメバチのような存在をあちこちに召喚しました。国綱さんはすぐに朱雀さんを向かわせて、焔でそれを消滅させたのですが……塵はまた集まり、同じ存在に戻っただけでした。
「なに!?」
国綱さんもですが、私もすごく驚きました。
これまで、あの男が裏で操っていた存在らは何とか対処出来たのに……目の前で起きたことが出来ません!?
これは……相当厄介な相手ですね。
「……目的は、私ですか?」
そして、男がこちら側に出てきた理由を私が問うと、男はさらに口元をゆるめてから大声で笑い出しました。
「お前か? 前はそうだったが……今はどうでも良い」
「……どうでも良い?」
「壊しまくって、その上で手に入れる方が……色々面白い。壊して……壊して、壊して」
そう口にしながら、また指を鳴らした後に。
彼の後ろから……昇華させたはずの屍鬼が、再び現れたのです!?
「……最後に残った『福』を手に入れた方がいい」
そんなこと、させない……と口にしたくても、目の前の状況の悪化に、私は白虎さんの背の上で座り込んでしまいました。
屍鬼が崩れ去っていき、校舎だった建物の残骸の上に……いきなり現れました。
警察署の牢屋では幻影のようでしたが、あれは明らかに違います。
肉体が存在し、魂を宿し。
こちらを見下すような、失礼極まりない意思を持つ目を向けてきています。白虎さんの背にいる、私や国綱さんを見ても、怯えも恐れもしていません。
『つまらない』
そのような表現が正しいのかは分かりませんが、感じられる感情はそのようなものしか分かりませんでした。
「……くく。屍鬼も昇華させるとは、ガキのくせに……お前らやるなあ?」
肉声ははじめて聴きましたが、酷く耳障りの悪いものです。叶うことならこれ以上聞きたくありませんが、状況からいってそれは無理でしょう。
「……何がしたい」
国綱さんの声が届いているのでしょう。男は顔を上げると、意外にも整った顔つきを嬉しそうにゆるめていました。
「何が? 壊したいだけさ。何もかも」
そうして指を鳴らすと、一瞬で大きなスズメバチのような存在をあちこちに召喚しました。国綱さんはすぐに朱雀さんを向かわせて、焔でそれを消滅させたのですが……塵はまた集まり、同じ存在に戻っただけでした。
「なに!?」
国綱さんもですが、私もすごく驚きました。
これまで、あの男が裏で操っていた存在らは何とか対処出来たのに……目の前で起きたことが出来ません!?
これは……相当厄介な相手ですね。
「……目的は、私ですか?」
そして、男がこちら側に出てきた理由を私が問うと、男はさらに口元をゆるめてから大声で笑い出しました。
「お前か? 前はそうだったが……今はどうでも良い」
「……どうでも良い?」
「壊しまくって、その上で手に入れる方が……色々面白い。壊して……壊して、壊して」
そう口にしながら、また指を鳴らした後に。
彼の後ろから……昇華させたはずの屍鬼が、再び現れたのです!?
「……最後に残った『福』を手に入れた方がいい」
そんなこと、させない……と口にしたくても、目の前の状況の悪化に、私は白虎さんの背の上で座り込んでしまいました。
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