【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第159話 触れた力

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 ……喰らう。

 何も……かも。

 塵芥。

 肉片すら、魂のかけらすら。

 そして、向かってくる何かの術ですら。

 大きい……。

 とても……大きい。

 力も、何もかも。

 含まれる、何もかもが。

 とても……とても大きい。

 あれを喰らったら、どうなるか?

 膨れる?

 散り散りになる?

 滅びる?

 そのようなことしか浮かばぬが。

 喰らいたい。

 喰らってしまいたい。

 我が力としたい!

 そのような欲望しか思い浮かばないのだが。

 その望みを叶えてくれるような……大きなものだった。

 だが、勢いよく近づくその力に触れたら……すぐに伸ばした腕が『消えて』しまったのだった!?


(き……え、る……!?)


 触れた先から。

 飲み込まれるように、散り散りに。

 塵芥のように、何も存在しなかったかのように。

 我は……消えていく!?

 嫌だ……いやだ!!?

 消えたくない!?

 今更逃げように、屍鬼しきの巨体では逃げ場などどこにもない!

 あの御方……あの、御方は、と思念を送ってみたが、何も返答をくださらない。

 何も役に立たない……愚か者を見放されたのか。それは……充分にあり得た。


(き……えて、くのか……)


 喰らった者らのように、我も……ここで。

 何故、蘇芳すおう時蟲ときむしは特別なのだ……?

 いつも……いつ何時も!?

 消えて……嫌だぁあああ!!
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