【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第144話 こちらにも

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 ほしい……。

 ほしいほしいほしい……。

 あれがあれが。

 それがそれが。

 ほしいのに……逃げられた。

 逃げられてしまった。

 つまんない、つまんない。

 ほしかったけど……まあいいや。

 ほんとうに、ほしいものじゃないから。

 ほんとうに、ほしいのは……。

 むしはむしでも、『時蟲ときむし』。

 あのむすめ。

 あの子ども。

 全然、こちらに来ない。

 来い来い。

 来い来い。

 さあさあ、おいで。

 残った力もある。

 お前もほしいだろう?

 なのに、何故来ない……。

 あの獣の娘も、美味しそうだったが。

 我らがほしいのは、お前だ。時蟲の娘。

 あの御方のために、奪いたい。取り込みたい。

 なのに、何故来ない?


「……なんだ、こいつ?」

「生徒にゃ見せられんな。休校にさせてよかったが」


 騒がしい、騒がしい。

 お前達じゃない……違う違う。

 うるさいうるさい……喰ってやるぅ。

 不味いが、力の足しにはなるだろう。

 わずかだけれど、マシはマシだ。
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