【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第136話 翠羽の食欲②

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(ああ……ハンバーガー)


 お家で作るご飯が美味しくないわけではありません。

 身体が戻ってからは私の担当ですが、国綱くつなさんが作られるご飯も美味しいんです。けれど、たまには食べたくなるのです。外食で多い、チープな味わいが。

 その筆頭であるように、国綱さんにお願いして買いに行く『十段チーズバーガー』は魅力的過ぎたのです。期間限定販売ということもあり、とても食べたいと思ってしまうほどに。

 さらに、そのハンバーガーだけでなく。


「フレンチフライドポテトのLにドリンクはオレンジL。僕も同じセットで飲み物はゼロコーラで」

「はい。かしこまりました」


 さすがは国綱さん。私がお願いせずとも、食べたいものをわかってくださいます。本音を言うと、チキンナゲットも食べたいところですが、お肉が多いメニューなので今回は我慢です。


「あ、やっぱり単品でナゲットも10ピース」

「かしこまりました」


 と思っていたら、注文してくださったのです! 気遣いMAXですよ、国綱さん!!

 出来上がったものを受け取った時は、私は飲み物とナゲットのトレーを。国綱さんはバーガーとポテトのトレーを。

 なかなかに圧巻した光景が出来上がりました。席に着くと、周りから奇異の目で見られているような気がしましたが……無視です。

 国綱さんがお綺麗なのはもちろんですが、迫力のあるハンバーガーを食べてよくない理由にはなりませんから!


(……ああ。お肉の匂いにチーズの匂い!)


 軽くジュースで喉を潤してから、ハンバーガーの包みを手に取りますと……鼻に直撃する匂いが堪りません!!

 がっついて食べたいところですが、国綱さんの前ではしたない姿は極力見せたくないとは思っています。女らしくありませんから。

 ですが、勢いよくかぶりつきたい欲求に負けそうになっていると、向かいの国綱さんはためらわずに思いっきりかぶりついていらっしゃいました。


「うん。美味い」


 実に、男らしい食べ方です。惚れ惚れしてしまうくらい。

 そんなにも美味しいものだと……匂い以上の情報を知ってしまうと。私は包みを開け、思いっきりかぶりついてしまいました……。

 罪深き、美味しいジャンクフードの味。実に美味しいです!!
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