131 / 206
第130話 来ないあの子
しおりを挟む
あの子が、学校に来なくなって……どれくらい経つんだろう?
空席が嫌に目立つ気がしたのは、私だけじゃないと思うんだよね。
(……今日も、か)
担任はホームルームでも特に何も言わずに出欠の確認を取るだけ。あの子のところになると、出欠簿にチェックを入れていただけだった。
病欠……らしいけど、入院なのかな?
怪我とか病気にしても、いきなりだったからびっくりした覚えはある。いや、そう言うのって緊急事態だから……いきなりかな?
けど、入院期間って普通どれくらいなんだろう? したことないから、だいたいの平均ってよく知らないし。
あの子……翠羽さんは目立つ子だった。
見た目もだけど、誰にも笑顔で嫌な顔ひとつしないって表現が当てはまるくらい、良い子で。私なんかのモブ子にも、普通に話しかけてくるくらい優しいクラスメイトだった。
友達? って言うのには、微妙な距離だったけど……私は好きだった。一方的かもしんないけど、獣人族では平凡な顔でしかない私にも、優しく接してくれるんだもん。女としても好ましく思ってた。
だから担任からある日、『しばらくお休みされるそうです』って言われた時にはガッカリ以上に、『ガーン』って気持ちになったもん。あんまり話せていなかったけど、翠羽さんは居るだけでも教室内を清浄化させてくれるような存在でもあったから。
(お見舞い行くべき? けど、連絡交換してないや)
今時校内でスマホ厳禁とかあるけど、別に授業中は電源切っておけば大丈夫。緊急連絡用とかには必要だもの。とは言え、翠羽さんとはちょこっと親しくなった以外何もしていない。
学校外で遊びに行ったことも、特にないクラスメイト。だから、交換したら迷惑……と勝手に思っていたけど、今はひどく後悔している。
もう二ヶ月以上も学校に来ていないから……やっぱり心配だった。
学校行事とかも、色々進んでいく時期なのに。翠羽さんがいないのが寂しい。私の鍵尻尾もしゅんと垂れていく。小さいから他から見てわかりにくいだろうけど。
『手を貸してやろうか?』
次の授業の準備をしている時に、変な男の声が聞こえてきたけど……なんとなく怖くて無視したわ。
空席が嫌に目立つ気がしたのは、私だけじゃないと思うんだよね。
(……今日も、か)
担任はホームルームでも特に何も言わずに出欠の確認を取るだけ。あの子のところになると、出欠簿にチェックを入れていただけだった。
病欠……らしいけど、入院なのかな?
怪我とか病気にしても、いきなりだったからびっくりした覚えはある。いや、そう言うのって緊急事態だから……いきなりかな?
けど、入院期間って普通どれくらいなんだろう? したことないから、だいたいの平均ってよく知らないし。
あの子……翠羽さんは目立つ子だった。
見た目もだけど、誰にも笑顔で嫌な顔ひとつしないって表現が当てはまるくらい、良い子で。私なんかのモブ子にも、普通に話しかけてくるくらい優しいクラスメイトだった。
友達? って言うのには、微妙な距離だったけど……私は好きだった。一方的かもしんないけど、獣人族では平凡な顔でしかない私にも、優しく接してくれるんだもん。女としても好ましく思ってた。
だから担任からある日、『しばらくお休みされるそうです』って言われた時にはガッカリ以上に、『ガーン』って気持ちになったもん。あんまり話せていなかったけど、翠羽さんは居るだけでも教室内を清浄化させてくれるような存在でもあったから。
(お見舞い行くべき? けど、連絡交換してないや)
今時校内でスマホ厳禁とかあるけど、別に授業中は電源切っておけば大丈夫。緊急連絡用とかには必要だもの。とは言え、翠羽さんとはちょこっと親しくなった以外何もしていない。
学校外で遊びに行ったことも、特にないクラスメイト。だから、交換したら迷惑……と勝手に思っていたけど、今はひどく後悔している。
もう二ヶ月以上も学校に来ていないから……やっぱり心配だった。
学校行事とかも、色々進んでいく時期なのに。翠羽さんがいないのが寂しい。私の鍵尻尾もしゅんと垂れていく。小さいから他から見てわかりにくいだろうけど。
『手を貸してやろうか?』
次の授業の準備をしている時に、変な男の声が聞こえてきたけど……なんとなく怖くて無視したわ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる