【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
107 / 206

第106話 戻ったが

しおりを挟む
 警察署の中に戻ってから。

 私の姿に驚かれた乃亜のあさんに事情を聞きました。

 私が黄泉がえりをさせた、二人の存在。

 元から……生きていない存在だったらしく。私と国綱くつなさんが昇華させた膿が消滅したタイミングで……彼らは土くれとなったと。

 現場を見させていただいたら……本当に土くれが固まっているだけでした。

 身体と記憶が戻った今では……彼らがもうあの世に行ったことを理解しました。

【戻せ】を唱えたところで、もう難しいでしょう。

 私は皆さんの前で首を横に振りました。


「……もう、出来ません」

「……そうですか。いいえ、その方が良いでしょう」


 乃亜さんは、私の能力を必要以上に使わないことを望みました。

 なら私も、頷くまでです。


「……はい」

「……しかし、翠羽みはねさん。再確認させてください」

「はい?」

「本当に……翠羽さん・・・・ですか?」


 含みのある言い方ですが、無理もありません。

 幽体化して、記憶もむーちゃんさんを通じて封印していた。

 翠羽はもう、弱い私ではないのですから。

 なので、私はもう一度頷きました。


「……はい。母の紅羽くれはより、時蟲ときむしを継承した翠羽です」


 服の袖をめくると……美しい蒼の模様が腕にありました。蟲を継承させた証である刺青のようなものです。

 先に戻った左腕ではなく、これは右腕に。

 これが先に戻れば、色々事情は変わっていたでしょうが。

 冥府に旅立った、彼らを黄泉がえりさせるのはもう無理です。

 蟲には軽くとも、禁忌を必要以上にしてはいけませんから。


「……そうですか。であれば、聞いても良いでしょうか? 貴女が、魍魎もうりょうらに……身体などをバラバラにされたのを」

「……すみません」

「え?」

「それは……あまり、覚えていないんです」


 私、母、国綱さんの能力などはきちんと覚えているのに。

 肝心の、私が国綱さんの側にいられなくなって……身体などをバラけさせられた記憶。

 そして、幽体化したまでの経緯は、全く覚えていなかったのです。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】皇帝の寵妃は謎解きよりも料理がしたい〜小料理屋を営んでいたら妃に命じられて溺愛されています〜

空岡
キャラ文芸
【完結】 後宮×契約結婚×溺愛×料理×ミステリー 町の外れには、絶品のカリーを出す小料理屋がある。 小料理屋を営む月花は、世界各国を回って料理を学び、さらに絶対味覚がある。しかも、月花の味覚は無味無臭の毒すらわかるという特別なものだった。 月花はひょんなことから皇帝に出会い、それを理由に美人の位をさずけられる。 後宮にあがった月花だが、 「なに、そう構えるな。形だけの皇后だ。ソナタが毒の謎を解いた暁には、廃妃にして、そっと逃がす」 皇帝はどうやら、皇帝の生誕の宴で起きた、毒の事件を月花に解き明かして欲しいらしく―― 飾りの妃からやがて皇后へ。しかし、飾りのはずが、どうも皇帝は月花を溺愛しているようで――? これは、月花と皇帝の、食をめぐる謎解きの物語だ。

【完結】もしも願いが叶うならあの時の約束を

翠月 歩夢
恋愛
子供の頃、離婚により別れてしまった茜と潤。 彼らは再会を誓ったけど会った時には溝ができてしまっていた。 話そうと決意した時、突然茜が死んでしまう。 もう一度会いたい。 そう思っていたら自称神様が願いを叶えるといって来たけど本当に叶えてくれるの……? 男と女の目線が1話ごとに入れ替わる話です。 ゲームっぽくリズムよく進むので暇つぶしにどうぞ。 進んでいくうちに謎が解けるような物語 全2万字程度。 順次公開していきます。 ※小説家になろう、エブリスタにも掲載しています。(過去作です) ※修正、変更しました。

【完結】国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く

gari@七柚カリン
キャラ文芸
☆たくさんの応援、ありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。  そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。  心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。  峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。  仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。  ※ 一話の文字数を1,000~2,000文字程度で区切っているため、話数は多くなっています。    一部、話の繋がりの関係で3,000文字前後の物もあります。

【完結】正妃に裏切られて、どんな気持ちですか?

かとるり
恋愛
両国の繁栄のために嫁ぐことになった王女スカーレット。 しかし彼女を待ち受けていたのは王太子ディランからの信じられない言葉だった。 「スカーレット、俺はシェイラを正妃にすることに決めた」

処理中です...