【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第103話 仮初の存在

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『……ありがと、国綱くつな翠羽みはね


 声も……私が幽体化だった時と同じものです。

 どう言うことなのでしょう?!


琥珀こはく……何故君が!?」


 国綱さんも、この事態がわかっていらっしゃらないようです。私もちっともわかりません。

 琥珀さんは……エルフと言う存在であっただけでは?


『……俺は、むーちゃんを繋ぎ止めるだけの存在だったんだ』


 国綱さんの問いかけに、琥珀さんは静かに微笑みました。その表情に涙はありません。


「……では、琥珀さんは」

『元は、翠羽よりも前に……浮遊霊だったエルフさ。君の母親、先代時蟲ときむし紅羽くれはに頼まれた。仮初の肉体と力を与える代わりに……むーちゃんの側に居てやって欲しい。その時が来るまで』

「……お母さん」


 この時、このために。

 むーちゃんさんと、琥珀さんを……繋ぎ止めた。

 こんな……こと、あっていいのでしょうか?

 今更ながら、私は涙が込み上がってきました。


『泣くな、翠羽。かわい子ちゃんが台無しだぜ?』


 消えていきますのに……琥珀さんは相変わらず軽口を言います。

 最期まで……明るくいようと。

 記憶がなかった時も、身体などを奪われる前も……琥珀さんはいつも琥珀さんです。

 でも、泣いていてはいけないと……手で涙を拭きました。


「……はい」

『いつまでも、願っているぜ。君達の幸せを』

「……ありがとう、琥珀」


 国綱さんが声をかけますと……琥珀さんはさらに明るい笑顔になり、光の粒となって消えていきました。

 完全に消える前に。


『むーちゃんと向こうでらぶらぶするぜ!』


 と言うあたり、むーちゃんさんと一緒だったのをとても楽しんでいたのでしょう。

 先に消えたむーちゃんさんもそうであってほしいです。


「……さて」


 二人で見送ってから……国綱さんは、膿があった箇所を見ました。

 グレーのアスファルトだったので、跡が残っていたため。

 国綱さんは、魔法……いいえ、術で浄化のしゅを唱えました。

 このままでは……ここは穢れているままですから。

 私も、併せて……祈りをしました。

 ここが、これ以上穢れないようにと。
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