【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第92話 スライムの役割②

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『……むーちゃんさん?』


 何を。

 何をしに。

 この場へ、来られた?

 琥珀こはくさんが泣いていらっしゃるのは。

 何故。

 何故?

 国綱くつなさんも、わからないようです。

 どろどろした存在は……ゆっくり、ゆっくり動いていましたが。

 むーちゃんさんが来てから……後ろへ動いた?

 何かを……恐れている?


『……私がここに来た意味』


 ぴょんと、琥珀さんの手から降りて……私の前に来てくださいました。

 キラキラな目が……今日は違います。

 強い……光を持っているようでした。


『……むーちゃんさん?』

『…………私は保険』

『……ほけん?』

「むー、まさか!?」

翠羽みはねのための……保険』


 身体の一部を伸ばし……触れられないはずの、私のおでこに。

 そこから……熱さを感じました!?


『あ……つっ!?』

「翠羽!?」

『……大丈夫。戻るだけだから』


 だから、今は拒絶しないで。

 むーちゃんさんにそうおっしゃられると……私は『いやだ』と思う気持ちを、出来るだけ無くすようにして。


(……大丈夫。大丈夫)


 戻るだけ。

 ただ、私は。

 生前とは違うけど。

 大事だと言ってもらえた。

 国綱さんの翠羽に戻るだけ。

 お母さんが持ってた……『時蟲ときむし』を継承した。

 高校生に戻るだけ。

 記憶。

 能力。

 それらを……お母さん達は、むーちゃんさんに残していた。

 私が狙われて。

 万が一に戻るのを……阻まれた時に。

 きちんと戻れるように。

 だけど……それは。


『……お、わ、り』


 むーちゃんさんの役割がなくなり。

 存在が消えることだと言うこと。

 琥珀さんと同じくらい……身体と記憶が戻りかけていた私は、涙が止まらなかった。
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