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第90話 スライムの役割①
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近い。
近い、近い。
もう、この段階まで来たのか。
予想以上に……早いし、場所も近い。
『私』は行かねばならないだろうか。
「……むーちゃん?」
夫の琥珀に呼ばれた。
彼も感じ取っていたのか、焦りが見え見えの表情でこちらに来た。
『……琥珀』
「行っちゃうの? 行っちゃうの! むーちゃん!!」
『……これは、定め』
「けど……けど!」
愛していた。
それは本当こと。
けれど……私は。
普通のスライムじゃない。
『保険』だ。
あの子のための。
翠羽のために存在するだけの。
失われたモノを、万が一に取り戻すための。
最悪手段。
その時が来れば……私はもう用済み。
『むーちゃん』ではなくなる……ただの要らない存在。
だけど……それでも。
琥珀が居てくれたのだから。
私は『私』でいられたのだ。
それだけでもう十分。
『……だから、連れてって。琥珀』
翠羽の危機だ。
時蟲の危機。
それはあってはならない。
この世の均衡が崩れてしまう前に。
私に預けられた『保険』を使わねば。
琥珀に頼むと……ぐしゃぐしゃの泣き顔になりながらも、私を抱き上げてくれたのだった。
近い、近い。
もう、この段階まで来たのか。
予想以上に……早いし、場所も近い。
『私』は行かねばならないだろうか。
「……むーちゃん?」
夫の琥珀に呼ばれた。
彼も感じ取っていたのか、焦りが見え見えの表情でこちらに来た。
『……琥珀』
「行っちゃうの? 行っちゃうの! むーちゃん!!」
『……これは、定め』
「けど……けど!」
愛していた。
それは本当こと。
けれど……私は。
普通のスライムじゃない。
『保険』だ。
あの子のための。
翠羽のために存在するだけの。
失われたモノを、万が一に取り戻すための。
最悪手段。
その時が来れば……私はもう用済み。
『むーちゃん』ではなくなる……ただの要らない存在。
だけど……それでも。
琥珀が居てくれたのだから。
私は『私』でいられたのだ。
それだけでもう十分。
『……だから、連れてって。琥珀』
翠羽の危機だ。
時蟲の危機。
それはあってはならない。
この世の均衡が崩れてしまう前に。
私に預けられた『保険』を使わねば。
琥珀に頼むと……ぐしゃぐしゃの泣き顔になりながらも、私を抱き上げてくれたのだった。
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