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第89話 もどかしい
しおりを挟む「翠羽、僕の後ろから離れないで」
国綱さんは私を下ろしますと……あの黒いどろどろした存在の前に立ちました。
存在は国綱さんの蘇芳も狙っているためか、ゆらゆらと揺れています。
【欲しい……欲しい】
【寄越せ……寄越せ】
【蘇芳……時蟲!】
最後の言葉は……私に対してでしょうか?
ときむしが、私の魔法の名前?
ちょっとだけ可愛らしいと思ってしまいましたが。
「欲しい? 簡単にはやらないよ。僕も、翠羽のも」
【……寄越せぇ!?】
国綱さんの否定の言葉に、存在はゆらゆらから大きく動き……国綱さんを覆い被せる勢いでしたが。
国綱さんが手をぱんぱんと叩くと……国綱さんから、綺麗な光が出てきました!
「……誰がやるか」
存在がパンっと……消えたように見えました。
ですが、すぐに元に戻り……少し距離を置いて、ゆらゆらと動いていましたね。色々大変なようです。
(……私も、何かお手伝い出来れば)
しかし……下手にお手伝いしてもお邪魔でしょう。あの存在を止めることが出来なかったのですから。
左手と腕に右脚だけでは……お役に立てません。
私の身体……どこにいるのでしょう?
国綱さんは、あの存在らが利用しているとお考えされていましたが。
今から……探せないでしょうか?
でも、この場を国綱さんおひとりにするわけにもいきません。どうすれば……。
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