【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第56話 推察

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 再生術だけでなく。

 翠羽みはね時蟲ときむしはそれ以上の能力を開花してしまったようだ。


「……悪を善に変えた?」

「……としか思えない」


 国綱くつなの推察を一から聞いたが……とても信じられないものばかり。

 翠羽の能力の底がわからない。

 その理解不能により……誘拐と幽体化、さらに身体をバラバラにさせた……『魍魎もうりょう』の思惑が意味不明。

 今日、左腕と手を所持していた……その一員は『森羅万象』を破壊することを目的だとこぼしたそうだが。


「んで、事情聴取出来るやつは大人しいのか?」

「……まるで、別人だ」

「なら……呪で人格どころか、魂をいじくられたんだろうなあ?」


 どこまでも……意地汚ない。

 国綱と翠羽の幸せを壊したこともだが。

 下手をすれば、世界破壊だけで済まないだろう。

 時蟲の寄生すら、先代の娘に起きるとは思わなかったしなあ?


「……それでも、僕は。翠羽の身体を取り戻したい」


 固く、自分の両手を握る……こいつの気持ちは本心でからだろう。付き合いがそこそこ長いので……よくわかる。

 あの時の、少年をそのままでかくしたわけではないが……もう二度も、こいつは大事なのを失ったのだから。


「……手伝うぜ?」


 俺が言えるのは……それくらいだ。

 こいつも翠羽も大事だから。

 だから、言うんだ。


「……ありがとう」


 きちんと笑っているつもりだろうが……まだ、その表情は苦笑いだった。
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