【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
51 / 206

第51話 私の役割

しおりを挟む

『……戻った』


 あの子の……大切なもの。

 またひとつ……戻った。

 嬉しいことだけど。

 同じくらいで……辛いことかもしれない。

 あの子は、思い出してしまうだろう。

 自分をバラバラにしたモノ。

 記憶を……バラバラにしたモノらのことを。

 国綱くつなとのこと。

 私達のこと。

 全部……全部、忘れてしまっている。

 なのに……時蟲ときむしは、あの子に寄生した。

 魂となってから……あの子に。

 何故……今なんだ?

 あの子の母親が死んだ時点で……寄生すればよかったものの。

 何故……今になって?

 あの子が、多くを失った……今なのだろうか?

 魍魎もうりょうらに……すべてを奪われたのに。

 何故……何故。

 あの子達の幸せを……穏やかなものにさせないのだ?

 失ったモノは多いが……幸せだったあの二人を。

 これ以上にない試練を……何故与えたのか。

 哀しい……辛い。

 それでも、いつか。

 私は……翠羽みはねに言わなくてはいけないのだろうか?

 記憶の一部を……私は魍魎らに植え付けられたことを。


『……伝えよう』


 私は、琥珀こはくがいるけれど。

 彼を悲しませるかもしれないけれど。 

 きちんと伝えよう。

 もしかしたら……死ぬかもしれないが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く

gari@七柚カリン
キャラ文芸
☆たくさんの応援、ありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。  そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。  心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。  峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。  仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。  ※ 一話の文字数を1,000~2,000文字程度で区切っているため、話数は多くなっています。    一部、話の繋がりの関係で3,000文字前後の物もあります。

お好み焼き屋さんのおとなりさん

菱沼あゆ
キャラ文芸
熱々な鉄板の上で、ジュウジュウなお好み焼きには、キンキンのビールでしょうっ! ニートな砂月はお好み焼き屋に通い詰め、癒されていたが。 ある日、驚くようなイケメンと相席に。 それから、毎度、相席になる彼に、ちょっぴり運命を感じるが――。 「それ、運命でもなんでもなかったですね……」 近所のお医者さん、高秀とニートな砂月の運命(?)の恋。

鬼の心臓は闇夜に疼く

藤波璃久
キャラ文芸
闇夜を駆ける少年は、        永い時を生きていく…。  鬼を心臓に宿す小太郎。 人間の中の悪意を食べ、生きている。 そんな小太郎の元に、桃太郎の子孫が現れた。 彼は、先祖がせん滅しそこねた、生き残りの鬼を探しているという。  彼らと戦う中、自分の存在について、悩み苦しむ小太郎。 そんな小太郎に、子孫の青年が下した決断は…。 日本を舞台にしたファンタジーです。 鬼や妖怪の解釈について、作者独自の設定があります。 過去編と現在編で物語を進めて行きます。 ※過去編には、カニバリズム的描写があるので、苦手な方はご注意下さい。

致死量の愛と泡沫に+

藤香いつき
キャラ文芸
近未来の終末世界。 世間から隔離された森の城館で、ひっそりと暮らす8人の青年たち。 記憶のない“あなた”は彼らに拾われ、共に暮らしていたが——外の世界に攫われたり、囚われたりしながらも、再び城で平穏な日々を取り戻したところ。 泡沫(うたかた)の物語を終えたあとの、日常のお話を中心に。 ※致死量シリーズ 【致死量の愛と泡沫に】その後のエピソード。 表紙はJohn William Waterhous【The Siren】より。

処理中です...