【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第37話 黄泉がえり

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 信じられない。

 生き返った……のでしょうか。

 翠羽みはねさんが……『戻した』、あの魍魎もうりょうの身体本体が。

 螺子ねじからの報告があり、声を発したと。

 さらに、意識のようなものまで取り戻したと……どう言うことなのでしょう?

 理解が追いつきません!!


「螺子君!!」


 特殊牢で待機していた部下の名を呼ぶと、彼女は少し青ざめているようでした。体毛に覆われているので、そのようにしか見えませんが。


「ぶ、部長!!」


 すがる勢いで駆け寄ってきましたが、格子がある牢に指を向けますと……たしかに、動かないでいたあの者が。

 正座をして……座っていたのです。


「……生きて、いますか?」


 月並みな台詞になってしまいましたが……言うしか出来ませんでした。

 それくらい、目の前で起きた『奇跡』は信じられなかったのですから!!


「おい、マジか!?」


 鑑識の燐音りんねさんにも連絡が行っていたようで……こちらに来てくださいました。彼が来たあたりで、魍魎の者がこくりと、首を縦に振りました。


「……ああ」


 声も意識も。

 きちんとしている。

 これは最早……『黄泉がえり』と言うべきでしょうか?

 顔色の方は、人間の形態ですが……青白くはありません。

 血色もきちんとしています。


「……生き返ったのか?」


 燐音さんが話しかけると、その者は首を左右に振りました。


「……それはわからない。今はその状態のようだが」


 きちんと受け答えが出来ている。

 しかしながら……生き返ったのかはわからない。

 どう言うことなのでしょう?


「……乃亜のあ。俺を中に入らせてくれ」


 燐音さんが鑑識として決断されたようで……私は今回は只事ではないので、頷きました。


「……お願いします」


 螺子君に言って、牢の格子を開けさせました。燐音さんが入っても、魍魎の者はその場を動きません。

 生き返ったことで……何かを感じたのでしょうか?

 いやに礼儀正しいので……聴取していた時以上に、こちらが調子を狂いそうです。


「……体温がねぇ」


 燐音さんが彼のあちこちを触れても、体温自体が感じ取れなかったようです。

 どうやら……呼吸はしてますが『屍人』と変わりないようですね。ゾンビやアンデットと呼ばれているのよりは……生きている存在に近いようですが。


「……あの少女の、役に立ちたい」


 燐音さんが離れると、彼は静かに言いました。


「あ? 嬢ちゃんに? お前ら狙っていたんだろ?」

「……この身体になって、感じた。彼女の優しさに」


 彼は、私の方に顔を向けてきました。

 その真剣さに、覚悟のようなものを感じましたね。


「……もし。また、奴らの呪いで殺されたとしても?」

「それでも……役に立てれば」


 であれば、これは。

 国綱くつなさん達には、きちんと情報整理をした上で……お呼びした方がいいでしょうね?
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