29 / 206
第29話 簡単な説明
しおりを挟む『この建物は……何をする場所ですか?』
螺子さんとお話することになりましたが……どうやら、この方には幽霊の部分の私も見えているようです。
座る事は出来ませんが、浮いていても螺子さんにはニコニコと微笑まれるだけでした。
「そうですね。翠羽さんは、どんなところだと思いますか?」
『……どんな?』
「失礼。そちらの記憶も欠如していますね? 簡単に言いますと……悪い事をした存在を捕まえておく建物のひとつだと思ってください」
『……ひとつ?』
このように、大きな建物が……まだ他にあるのでしょうか?
しかし……『悪い事』をした存在を捕まえておく?
たしかに、私の右足で何かをしようとしていたあの黒い布は……悪い事をしようとしていましたが。
国綱さんは、彼に会いに行ったのでしょうか? 穏やかなことではありませんが。
「ええ。異種族に合わせた、『留置所』などと呼ばれている建物で……罪の度合いを測るまで待機してもらっていたりします。程度によりますが……ほとんどの悪人は、解放されません」
『……悪い事をしたからですか?』
「そうですね。許しがたい事をした場合が……多いからです」
螺子さんは、自販機で作った飲み物を……軽く口につけました。その後、軽く息を吐きましたが。
『…………私、の身体ですが。悪い人達に、利用されているのでしょうか?』
国綱さんにも少し似た質問をしましたが……螺子さんは、答えてくださるでしょうか?
少し気になり……聞いてしまいましたが。
すると、螺子さんは獣耳をピンと立てました。
「……そうですね。その可能性は十分あるでしょう。私もまだ課長に詳しく聞いていませんが……お嬢さんの身体を利用しようとしているのは許せませんね」
コップは柔らかい素材で出来ているのか……螺子さんの毛で覆われた手で軽く潰れかけました。
びっくりしましたが……この方にも心配していただけるのが、少し嬉しかったです。初めて会う方ですのに……。
『……ありがとうございます』
ですから、お礼を告げますと……螺子さんは少し頬を緩ませて笑ってくださいました。
「……いえ。大したことは出来ていませんが。私もあなたの身体を見つける手助けをさせてください」
『……良いのでしょうか?』
「課長……乃亜さんもきっとそう言う方ですからね? 部下の私もそう思いますよ」
『……ありがとうございます』
あの黒い布の存在以外……本当にお優しい方達ばかりです。
あの黒い布は……私の身体を、何に利用しようとしていたのでしょう? 私の魔法は……幽霊の方にあるようですから、何も役に立たない……と思っているのは私だけかもしれませんが。
国綱さんはまだでしょうか?
何か、得たものはあったのでしょうか?
早く……聞いてみたいです。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち
鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。
心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。
悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。
辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。
それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。
社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ!
食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて……
神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる