25 / 206
第25話 透明の知己
しおりを挟む
許しがたいことです。
あのように……まだ十代の女の子を巻き込むとは。
しかしながら……『魍魎』、奴らの落ち度は……きちんとありましたとも。
「……私より若いですが、『蘇芳』を敵に回してしまった」
国綱さんの御宅から出た後……私は、彼の家の外を久しぶりに眺めました。
まだ私が青二歳だった頃、彼のご両親が事故で亡くなる前……蘇芳の擁護もあり、警察にも保護要請を受けた時です。
私が透明人間と言うこともあり、担当の一人として上司と訪問しましたが……まだ、国綱さんが小さな子供の頃でした。蘇芳と言う寄生型の能力を持つ人間を初めてみた瞬間でしたが……実際は可愛らしい少年で、国綱さんは人見知りせず、透明人間である私にも懐いてくださいました。
実は、翠羽さんとも初対面ではありません。
記憶と幽体化以前に……国綱さんの許嫁と言うことで、紹介され、私のことも知っていたはずなのに。
『なにも覚えていなかった』。
常識についても、随分と希薄。
行方不明になる前に、国綱さんからも捜索願いは出されていましたが……あのような形で彼の元にいるとは。
「……隠してはいますが、胸中では相当複雑でしょう」
事故で、お互いの両親を失ってしまった。
あの時は、国綱さんも蘇芳としての能力が未熟で……車でのよくある事故だったとは言え、彼は両親を助けることは出来ませんでした。
葬儀で、二人が泣くのを堪えていた記憶は……私の見えない瞼にも焼きついていますとも。
だからこそ……私が後見として、彼とは接点を増やすことにしました。
彼が進学しても、就職はせずに彼の両親の家業であった『何でも屋』を再開したいと提案があった時は……よく話し合いました。死に急いではいないかなどと色々。
ですから……翠羽さんの現状は、彼の負担を大きく増やしてしまっているのに。
彼女自身も……特殊な能力をあの状態で目覚めてしまった。
私と国綱さんは、少しばかり彼女に嘘をつきましたが。
彼女の能力も、また……国綱さんのと同じ、奇声型なのです。
「『時蟲』……ですか」
蘇芳と同じく、宿主を選ぶのは気まぐれだとされていますが。
いつ、どこで。どのタイミングで宿主を決めるのは、本当に気まぐれ。
文献程度ですが、彼女の母親も同じ宿主だったので……事故を機に娘を選んだのでしょう。ただ、開花したのは、嗅ぎつけた魍魎らを危惧して……幽体化にされた時でしょうが。
時間流を操作して、傷などを治すのはまだまだ序の口。
「守りましょう。助けますよ、お二人とも」
警察としてもですが、知己でもある一個人としても。
彼らの生活を……元の平穏に取り戻して差し上げたい。
だからこそ……署に戻り、あの幹部らしき奴をさらに絞り上げましょう。
ですが。
「乃亜課長!! 大変です!!」
戻ってきてすぐさま取り掛かろうとしたのですが。
一度聴取した彼は……牢屋の中で、いきなり爆音を轟かせ、身体を粉々にしたとの部下からの報告がありました。
牢屋に行くと……能力防止の柵の向こう側では、潰れた肉があちこち壁や床に散り散りになっていて。
絶対……若い者には見せたくない、悲惨な光景となっていました。
「……魍魎の、やり方か!」
考えられるとしたらその程度。
下っ端の時はありませんでしたが……幹部間近だと呪いを施していたのか。
これでは……足が辿れない。普通なら。
出来れば呼びたくはありませんが……見通す能力を持つ、国綱さんの蘇芳を借りるしかないでしょう。
あのように……まだ十代の女の子を巻き込むとは。
しかしながら……『魍魎』、奴らの落ち度は……きちんとありましたとも。
「……私より若いですが、『蘇芳』を敵に回してしまった」
国綱さんの御宅から出た後……私は、彼の家の外を久しぶりに眺めました。
まだ私が青二歳だった頃、彼のご両親が事故で亡くなる前……蘇芳の擁護もあり、警察にも保護要請を受けた時です。
私が透明人間と言うこともあり、担当の一人として上司と訪問しましたが……まだ、国綱さんが小さな子供の頃でした。蘇芳と言う寄生型の能力を持つ人間を初めてみた瞬間でしたが……実際は可愛らしい少年で、国綱さんは人見知りせず、透明人間である私にも懐いてくださいました。
実は、翠羽さんとも初対面ではありません。
記憶と幽体化以前に……国綱さんの許嫁と言うことで、紹介され、私のことも知っていたはずなのに。
『なにも覚えていなかった』。
常識についても、随分と希薄。
行方不明になる前に、国綱さんからも捜索願いは出されていましたが……あのような形で彼の元にいるとは。
「……隠してはいますが、胸中では相当複雑でしょう」
事故で、お互いの両親を失ってしまった。
あの時は、国綱さんも蘇芳としての能力が未熟で……車でのよくある事故だったとは言え、彼は両親を助けることは出来ませんでした。
葬儀で、二人が泣くのを堪えていた記憶は……私の見えない瞼にも焼きついていますとも。
だからこそ……私が後見として、彼とは接点を増やすことにしました。
彼が進学しても、就職はせずに彼の両親の家業であった『何でも屋』を再開したいと提案があった時は……よく話し合いました。死に急いではいないかなどと色々。
ですから……翠羽さんの現状は、彼の負担を大きく増やしてしまっているのに。
彼女自身も……特殊な能力をあの状態で目覚めてしまった。
私と国綱さんは、少しばかり彼女に嘘をつきましたが。
彼女の能力も、また……国綱さんのと同じ、奇声型なのです。
「『時蟲』……ですか」
蘇芳と同じく、宿主を選ぶのは気まぐれだとされていますが。
いつ、どこで。どのタイミングで宿主を決めるのは、本当に気まぐれ。
文献程度ですが、彼女の母親も同じ宿主だったので……事故を機に娘を選んだのでしょう。ただ、開花したのは、嗅ぎつけた魍魎らを危惧して……幽体化にされた時でしょうが。
時間流を操作して、傷などを治すのはまだまだ序の口。
「守りましょう。助けますよ、お二人とも」
警察としてもですが、知己でもある一個人としても。
彼らの生活を……元の平穏に取り戻して差し上げたい。
だからこそ……署に戻り、あの幹部らしき奴をさらに絞り上げましょう。
ですが。
「乃亜課長!! 大変です!!」
戻ってきてすぐさま取り掛かろうとしたのですが。
一度聴取した彼は……牢屋の中で、いきなり爆音を轟かせ、身体を粉々にしたとの部下からの報告がありました。
牢屋に行くと……能力防止の柵の向こう側では、潰れた肉があちこち壁や床に散り散りになっていて。
絶対……若い者には見せたくない、悲惨な光景となっていました。
「……魍魎の、やり方か!」
考えられるとしたらその程度。
下っ端の時はありませんでしたが……幹部間近だと呪いを施していたのか。
これでは……足が辿れない。普通なら。
出来れば呼びたくはありませんが……見通す能力を持つ、国綱さんの蘇芳を借りるしかないでしょう。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
隣の家に住むイクメンの正体は龍神様でした~社無しの神とちびっ子神使候補たち
鳴澤うた
キャラ文芸
失恋にストーカー。
心身ともにボロボロになった姉崎菜緒は、とうとう道端で倒れるように寝てしまって……。
悪夢にうなされる菜緒を夢の中で救ってくれたのはなんとお隣のイクメン、藤村辰巳だった。
辰巳と辰巳が世話する子供たちとなんだかんだと交流を深めていくけれど、子供たちはどこか不可思議だ。
それもそのはず、人の姿をとっているけれど辰巳も子供たちも人じゃない。
社を持たない龍神様とこれから神使となるため勉強中の動物たちだったのだ!
食に対し、こだわりの強い辰巳に神使候補の子供たちや見守っている神様たちはご不満で、今の現状を打破しようと菜緒を仲間に入れようと画策していて……
神様と作る二十四節気ごはんを召し上がれ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる