【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第16話 失礼な輩

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 なんと……失礼な。

『私の足』らしいものが入っている……水晶の塊ですが。

 あの黒い布をかぶった存在は、私や国綱くつなさんに返してくれないようです。

 何か……理由があるにしても。

 不気味な声は……さらに下品な言葉を口にしました。


「わざわざ……蘇芳すおうだけでなく、この身体の魂をも連れてきてくれるとは。愉快愉快!!」


 気持ち悪いですね、あまり聞きたくありませんが。

 しかしながら……あの存在をどうにかせねば、この場はどうにもならないでしょう。

 国綱さんは、私の前に立つと……私を先に行かせないように、手で遮りました。


「……彼女は渡さない」


 力強い言葉です。

 安心出来る、優しさも感じます。

 しかし、喜んでいる場合ではありません。

 私は、国綱さん越しに見える存在をの向こう、『足』を見ましたが。


 白く、細長く、肉付きの良い綺麗な足。


 靴やら靴下やらを身につけていますが……上を見ると、太ももの上は何もありません。

 怪我とか、血は見えず……ただ切り取られたかのような。

 どのような方法で……私の身体をバラバラにしたのでしょう?

 気にはなりますが……あの黒い布は、おそらく簡単には答えてくれないでしょうね?

 それと、忘れかけてはいましたが……あの存在は私が見えるようです。


「渡さない? そんな戯言……言えなくしてやるわ!!」


 黒い布は、手を国綱さんに向け……何か、魔法を出してきました!

 黒い……何か。

 形が定まり、それは何か『存在』になりました。

 道ゆくあらゆる存在とは違う……気持ち悪いものに。

 もじゃもじゃしていて……変に息を荒げていました。


「……僕を止められると?」

「見たところ……蘇芳としては、未熟者のようだからなあ? こいつくらいでちょうどいい!」


 なんて失礼な。

 国綱さんがお強いかどうかは、私もまだわかっていませんが。

 国綱さんを、過小評価されるのは気持ちの良いことではありません!!

 私、怒りました!!


【……失せろ】


 私が前に出ようとしたのですが。

 国綱さんから、今まで聞いたことがない……低い声が聴こえてきました。

 そして……その言葉を聴いたのは私だけではありませんから。

 あのもじゃもじゃした存在が……ぐにゃりと形を変え、思いっきり弾けたのです!?


「何!?」

「……蘇芳を馬鹿にしない方がいい」


 国綱さんは通り抜けられますのに、わざわざ私を避けて前に出られました。


『……国綱さん?』

「この子のために、今ある目だ。悪いが……手加減はしない」


 そう呟き、国綱さんは両手を前に出したのです。
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