9 / 206
第9話 料理への興味
しおりを挟む
お料理と言うのを、このお家に来てから……あまり覗いて見ていませんでしたが。
国綱さんは材料を揃えられると、『よし』と細長い紐で袖などを整えられました。
「活力も大事だ。今日は揚げ物にしよう」
『あ……げもの?』
「翠羽も食べれるようになったら、気に入ると思うよ。僕は大好物なんだ」
『……国綱さんのお好きな?』
そのようなものを知れる。
少しばかり、嬉しく思えました。
ですが、お手伝いは出来ませんので……近くで調理と言うものを拝見させていただきます。
まずは、茶色の……国綱さんの手くらいの大きさの塊を、水で洗い……刃物で切ると内側は黄色の何か。国綱さんは、それを不思議な形に切っていきます。
「完全に油物だけだと胃もたれするから……これは揚げ焼きにしよう」
『……これは?』
「じゃがいもと言う野菜。けど、米の代わりにもなる栄養の高いものなんだ。主食にすることも可能。これに火を通すと柔らかくて美味しいものになるんだ」
『……じゃがいも』
名称を聞いても、記憶が朧げである私にはよくわかりません。
ですが……先ほどとは違って、国綱さんは少し楽しそうにしていらっしゃいます。そのお邪魔をしてはいけません。
国綱さんは、底の深く透明な器にじゃがいもを入れ……黒い大きな箱の中に入れ、閉じた扉の横にある何かを触って動かされました。
「今は便利なものが多い。これもそのひとつだ」
『……なん、ですか?』
「電子オーブンさ。目に見えない力を利用して、食材に火を通すことが出来る機械。翠羽や僕の力よりは、一般的に使われているものさ」
『……べんり、ですか?』
「ああ。ある意味、術……魔法と同じ扱いだと思っていい」
『……まほう』
国綱さんの手を治せた私のように……あのおーぶんと言う箱が、役に立つと言うこと。
これは観察せねば、と近いたのですが……音が少し聞こえるだけで、覗いても変化とやらがわかりません。
国綱さんは、他の作業をされていましたが……おーぶんが高い音を立てると、私に一言声をかけてから……開けて、器を取り出しました。
「……うん。まあ、大丈夫か」
覗かせてもらいましたが……入れる前よりも、じゃがいもの色が少し薄くなっているような?
国綱さんは、それに細長い棒のようなものを刺しました。すーっと、突き抜けて!
『……柔らかい?』
「これをさらに、表面を焼いて岩塩をかけるだけでも……充分に美味いんだ」
『……美味しい、料理』
楽しそうです。
ですが……お手伝いも出来ない幽霊のままでは、食事も出来ません。
国綱さんの手がけるお料理は……とても美味しそうに見えますが、触ろうとしても……私はすり抜ける存在。
共有したいことが出来ないのを……こんなにも歯痒く思ったことがありません。
私は……欲張りになってしまったのでしょうか?
「……大丈夫。翠羽も身体が戻れば、一緒に食べられるよ」
そんな私に……国綱さんは、欲しい言葉をくださいます。
数日前とは違い……得た感情をこんなにも嬉しく思ったことがありません!
国綱さんは材料を揃えられると、『よし』と細長い紐で袖などを整えられました。
「活力も大事だ。今日は揚げ物にしよう」
『あ……げもの?』
「翠羽も食べれるようになったら、気に入ると思うよ。僕は大好物なんだ」
『……国綱さんのお好きな?』
そのようなものを知れる。
少しばかり、嬉しく思えました。
ですが、お手伝いは出来ませんので……近くで調理と言うものを拝見させていただきます。
まずは、茶色の……国綱さんの手くらいの大きさの塊を、水で洗い……刃物で切ると内側は黄色の何か。国綱さんは、それを不思議な形に切っていきます。
「完全に油物だけだと胃もたれするから……これは揚げ焼きにしよう」
『……これは?』
「じゃがいもと言う野菜。けど、米の代わりにもなる栄養の高いものなんだ。主食にすることも可能。これに火を通すと柔らかくて美味しいものになるんだ」
『……じゃがいも』
名称を聞いても、記憶が朧げである私にはよくわかりません。
ですが……先ほどとは違って、国綱さんは少し楽しそうにしていらっしゃいます。そのお邪魔をしてはいけません。
国綱さんは、底の深く透明な器にじゃがいもを入れ……黒い大きな箱の中に入れ、閉じた扉の横にある何かを触って動かされました。
「今は便利なものが多い。これもそのひとつだ」
『……なん、ですか?』
「電子オーブンさ。目に見えない力を利用して、食材に火を通すことが出来る機械。翠羽や僕の力よりは、一般的に使われているものさ」
『……べんり、ですか?』
「ああ。ある意味、術……魔法と同じ扱いだと思っていい」
『……まほう』
国綱さんの手を治せた私のように……あのおーぶんと言う箱が、役に立つと言うこと。
これは観察せねば、と近いたのですが……音が少し聞こえるだけで、覗いても変化とやらがわかりません。
国綱さんは、他の作業をされていましたが……おーぶんが高い音を立てると、私に一言声をかけてから……開けて、器を取り出しました。
「……うん。まあ、大丈夫か」
覗かせてもらいましたが……入れる前よりも、じゃがいもの色が少し薄くなっているような?
国綱さんは、それに細長い棒のようなものを刺しました。すーっと、突き抜けて!
『……柔らかい?』
「これをさらに、表面を焼いて岩塩をかけるだけでも……充分に美味いんだ」
『……美味しい、料理』
楽しそうです。
ですが……お手伝いも出来ない幽霊のままでは、食事も出来ません。
国綱さんの手がけるお料理は……とても美味しそうに見えますが、触ろうとしても……私はすり抜ける存在。
共有したいことが出来ないのを……こんなにも歯痒く思ったことがありません。
私は……欲張りになってしまったのでしょうか?
「……大丈夫。翠羽も身体が戻れば、一緒に食べられるよ」
そんな私に……国綱さんは、欲しい言葉をくださいます。
数日前とは違い……得た感情をこんなにも嬉しく思ったことがありません!
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
となりの京町家書店にはあやかし黒猫がいる!
葉方萌生
キャラ文芸
★第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。お読みくださった皆様、本当にありがとうございます!!
京都祇園、弥生小路にひっそりと佇む創業百年の老舗そば屋『やよい庵』で働く跡取り娘・月見彩葉。
うららかな春のある日、新しく隣にできた京町家書店『三つ葉書店』から黒猫が出てくるのを目撃する。
夜、月のない日に黒猫が喋り出すのを見てしまう。
「ええええ! 黒猫が喋ったーー!?」
四月、気持ちを新たに始まった彩葉の一年だったが、人語を喋る黒猫との出会いによって、日常が振り回されていく。
京町家書店×あやかし黒猫×イケメン書店員が繰り広げる、心温まる爽快ファンタジー!
星詠みの東宮妃 ~呪われた姫君は東宮の隣で未来をみる~
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました!🌸平安の世、目の中に未来で起こる凶兆が視えてしまう、『星詠み』の力を持つ、藤原宵子(しょうこ)。その呪いと呼ばれる力のせいで家族や侍女たちからも見放されていた。
ある日、急きょ東宮に入内することが決まる。東宮は入内した姫をことごとく追い返す、冷酷な人だという。厄介払いも兼ねて、宵子は東宮のもとへ送り込まれた。とある、理不尽な命令を抱えて……。
でも、実際に会った東宮は、冷酷な人ではなく、まるで太陽のような人だった。
ハードボイルド探偵・篤藩次郎(淳ちゃん)
黒猫
キャラ文芸
ハードボイルドとは何か。その定義を教えてやろう。
それはズバリ、酒と女だ。
ちなみに俺は、どっちも弱い。
というか、そういうのは仕事には持ち込まないモンだからな、むしろ弱くて良かった。つくづく、そう思う。
そしてこれは、我がハードボイルド探偵事務所に舞い込んだ妙な依頼と、それを見事に解決したハードボイルドな俺と由紀奈の大活躍の記録の数々だ。
ああ、由紀奈というのは従姪で、口の悪い、俺の助手だ。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる