【完結】見通すのは蘇芳の瞳〜その出会いは必然か偶然か?〜

櫛田こころ

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第5話 困難な探し物

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「んんん~~!?」


 いつまでも見ていたいと思っていますと。

 琥珀こはくさんが声を上げられ、ご自分の髪をガシガシと両手で掻きました。


「……これは、手強い」


 国綱くつなさんの瞳も、光が消えて……いつものように綺麗な瞳に戻りましたが。珍しく……困ったような表情でいらっしゃいました。

 そっと、私は飛んで近づきましたが……おふたりは相変わらず、頭を抱えたり掻いたりされていました。

 作業と言うのが、大変だったのでしょうか?

 すいしょうと言うのを覗いてみましたが……玉の中では『割れている』ものが見えました。『少女』が存在していて……割れていたのです。何かの破片が散らばったような。


『……これは?』

「あ~~……結構面倒だこりゃ」


 私の問いには、琥珀さんが答えてくださるようです。


『めんどう?』

「そ。翠羽みはね……君の身体は、一箇所にあるわけじゃねぇようだ」

『え?』

「……バラバラにされている可能性が高い」


 国綱さんも、落ち着かれたのか……大きくため息を吐いてから顔を上げられました。表情は、非常に困ったご様子です。

 しかし、今の言葉を踏まえると。


『……私、すぐに戻れないのですか?』


 この言葉は……ほぼ確定でしょうね?

 おふたりも、ゆっくり頷かれました。


「うん。めっちゃ面倒なことになってそう」

「……安易ではないと思っていたが。まさか、身体をバラバラにするとは」

「けど。ここまで導けば……【蘇芳すおう】で追えるんじゃね?」

「……やれるだけやってみよう。壊していいか?」

「請求だけはするぞー」

「……ああ」


 何を? と私が質問しかけましたが。

 国綱さんが……すいしょうに手を乗せ、しっかりと握られました。

 すいしょうが赤紫に光り、国綱さんの瞳も先程と同じように。

 光はどんどん大きくなり……さらに、どこからか風まで吹き荒れてきました!! 幽霊である私ですのに……吹き飛ばされそうです!?


『く……つ、な……さ!?』


 絞り出すように声をかけても……国綱さんは気づいていないようです。

 琥珀さんは、国綱さんを見守っているようですが。

 これは……いったい何を? とわからない状況ではありますが。

 国綱さんは……『私』のために、何かをされていらっしゃる。それだけは、なんとかわかりました。


「……【蘇芳】の主として問う。望む物を、我が前に」


 すいしょうに向けて、その言葉を紡いでいらっしゃいましたが。

 最後の言葉を紡ぐと……すいしょうから『ピシッ』と大きな音が聞こえてきました!?



 パリィイイイイン!!



 そして……粉々に割れてしまったのです!!

 砕けたとも言いますか。

 国綱さんが大丈夫かと思いましたが……彼の前では、すいしょうを見た時と同じように、先ほどの『割れた私』の姿が浮かんでいました。


『……探し物、失せ物。すぐ近く』


 その『私』の歪んだ口から……私と同じではない声が出てきました。少し驚きましたが……それはすぐに消えてしまいました。


「あ~あ、派手に壊したなあ?」


 琥珀さんは、特に驚いているようには見えませんが……すいしょうが壊れたことを残念がっているようです。


「……まあ。簡単な手がかりしか得られなかったけど」


 国綱さんは落ち着いていらっしゃるようですが……ぱたた、と何かが落ちる音が聞こえてきました。

 彼の手が……怪我をしていらっしゃったのです!?
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