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33-3.これからの未来
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登用制度。
その言葉に馴染みのない穫は、出勤前の着替えなどの時間を短縮してから、咲夜にもらった書類をよく読むことにした。
簡単に言えば、アルバイトからでも研修などを受ければ正社員に起用されることが出来る制度だそうだ。この本屋はそこそこ大きく、他店舗もいくつかある。定年は一応あれど、定年後のパート起用での補償もあるらしい。
ただの会社説明会を聞きに行く以上に、穫はそれらの魅力的な文字にのめり込みそうになった。こんな身近なところに就職の道があるだなんて思ってもいなかったからだ。
店長に聞きに行くと、穫もだが咲夜も真面目に勤務しているので今年から始まる登用制度に是非チャレンジしてみないかと言ってもらえた。咲夜はよくわかっていなかったが、笑也と話すのに書類と一緒に話も持ち帰ろうと決めて。
その日の夕食後に、笑也もだがエミにも登用制度について話してみる事にした。
「……穫ちゃんは興味があるんだね?」
『そうみたいねん??』
話題を出しただけで、やはり二人にはバレバレだったのだろう。
穫も頷くと、笑也から手を握られた。
「呪怨達のせいで、望めない生活を虐げられていたんだ。今からも、これからも、君の思うように生きていい」
温かな言葉をくれる、笑也。
その言葉だけではなく眼差しにも、この人とも一緒に生きたいと思うのだった。
「笑也さんとも……皆さんとも一緒です!!」
『そうよねん? みのりん?』
「はい!!」
「私も一緒だ!!」
「俺もー!!」
まだ完全に決定したわけではないが、これから先も皆と生活出来るようになれば嬉しいと思う。
『んじゃぁ~、笑也?』
「……うん。そうだね?」
エミと笑也が顔を向き合った後、咲夜と羅衣鬼はエミに首根っこを掴まれて何処かに行ってしまい。
笑也は自室から何かを持ってきて、それを穫の前に差し出した。
「……これは?」
ベルベットの紺色の箱。
その箱の意味を、疎い穫でもなんとなく察せたが、少し不安だった。間違っていたら、怖いと。
「……エミ達に催促されたからじゃないけど」
笑也は箱を開けてくれた。中にはひと組のシルバーリングが。
「先に、僕にも約束が欲しい。君のこれからの未来の」
その言葉が嬉しくないわけがなく。
穫は飛びつくようにして、笑也に抱きついた。
その言葉に馴染みのない穫は、出勤前の着替えなどの時間を短縮してから、咲夜にもらった書類をよく読むことにした。
簡単に言えば、アルバイトからでも研修などを受ければ正社員に起用されることが出来る制度だそうだ。この本屋はそこそこ大きく、他店舗もいくつかある。定年は一応あれど、定年後のパート起用での補償もあるらしい。
ただの会社説明会を聞きに行く以上に、穫はそれらの魅力的な文字にのめり込みそうになった。こんな身近なところに就職の道があるだなんて思ってもいなかったからだ。
店長に聞きに行くと、穫もだが咲夜も真面目に勤務しているので今年から始まる登用制度に是非チャレンジしてみないかと言ってもらえた。咲夜はよくわかっていなかったが、笑也と話すのに書類と一緒に話も持ち帰ろうと決めて。
その日の夕食後に、笑也もだがエミにも登用制度について話してみる事にした。
「……穫ちゃんは興味があるんだね?」
『そうみたいねん??』
話題を出しただけで、やはり二人にはバレバレだったのだろう。
穫も頷くと、笑也から手を握られた。
「呪怨達のせいで、望めない生活を虐げられていたんだ。今からも、これからも、君の思うように生きていい」
温かな言葉をくれる、笑也。
その言葉だけではなく眼差しにも、この人とも一緒に生きたいと思うのだった。
「笑也さんとも……皆さんとも一緒です!!」
『そうよねん? みのりん?』
「はい!!」
「私も一緒だ!!」
「俺もー!!」
まだ完全に決定したわけではないが、これから先も皆と生活出来るようになれば嬉しいと思う。
『んじゃぁ~、笑也?』
「……うん。そうだね?」
エミと笑也が顔を向き合った後、咲夜と羅衣鬼はエミに首根っこを掴まれて何処かに行ってしまい。
笑也は自室から何かを持ってきて、それを穫の前に差し出した。
「……これは?」
ベルベットの紺色の箱。
その箱の意味を、疎い穫でもなんとなく察せたが、少し不安だった。間違っていたら、怖いと。
「……エミ達に催促されたからじゃないけど」
笑也は箱を開けてくれた。中にはひと組のシルバーリングが。
「先に、僕にも約束が欲しい。君のこれからの未来の」
その言葉が嬉しくないわけがなく。
穫は飛びつくようにして、笑也に抱きついた。
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