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32-4.この二人の関係(斎視点)
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いい式であった。
反対派を押し切るのに、また色々と時間がかかり……一年近くも式が伸びてしまったが。想いを交わした水無と無事に結婚出来たのだ。
(……今日は世間一般で言うなら、初夜……!?)
付き合う期間は短いと思っていたが、結局一年以上期間が空いてしまったのだ。その間に、何度か関係を持つことも出来たのに、水無はして来なかった。
そう言う関係を持つのに、淡白なのかとも思ったが、由良に一度聞いてみるとそうでないことがわかった。
『万が一、自分が命を落とす事項が有れば……斎様を傷物にした己との関係は忌み嫌われるだけですまない。あれは、阿呆なんですよ』
だから、結婚するまで耐えに耐えていたのだと由良は告げてくれたのだ。そんな意味がないとは思うが、斎はただの女ではない。万乗を束ねる女当主だ。
いずれは、他家に嫁ぐか婿入れすると思っていたのを、分家の水無を伴侶に選んだのだから。反対派はとても多い。万が一に、怨霊退治などで彼自身が命を落とせば、関係を持った斎を押しのけて当主の座を狙う輩もいるかもしれない、と。
誠実な男性だと、ますます斎は彼に惚れ込んでしまう。
そして、水無が手配してくれたホテルのスイートルームで斎はひとりで待っていた。キングサイズの、ベッドの端で。
先に風呂に入るように勧められたからだ。服装はバスローブで。いかにも、『この後セックスします』と言う雰囲気丸出しだ。夫婦になる事が出来たのだから、それくらい当たり前。
なのに、斎はまだ水無とキスすらしていない。
想いは告げてもらった。少しずつ、距離を縮めていきたいとは言ってくれた時もあった。けれど、由良に教わった水無が抱えていた思いもある。そのせいで、恋愛的要素はほとんどなかった。
少し寂しく感じたが、これが彼との距離感なんだと言い聞かせて約一年。
ついに、彼と夫婦になれたのだからその関係も崩れる時が来た。
ベッドの端に座りながら、まるで子供のように縮こまって待っていると、水無が風呂から出てきた。
屋敷では別々の部屋だったので、風呂上がりの彼を見るのは初めてだ。ゆっくり顔を上げると、まるで映画のワンシーンのように、乱雑に髪をタオルで拭いていたが色気満載の夫となった男性が立っていた。
「……どうしました?」
その渋めの声で呟かれると、余計に色気が増すのは本人も知っているのだろうか。
「…………ずるいわ、水無」
分家だったとは言え、こんな素敵な男性が夫にだなんて未だに信じられない。美貌の釣り合うなどの問題ではない。内面が、この彼に釣り合うか斎には自信がなかった。
すると、タオルを適当に放った水無が斎の前に立った。
「…………何が、ずるいんですか?」
未だに敬語を無くさないのもそうだ。結婚したら考えるとも言っていたのに、わざとかもしれない。だから斎は、恥ずかしくても彼に顔を向けた。
「夫婦になったんでしょう? だったら今は……ううん。これからも、私達は万乗の当主だわ。それらしく……して、欲しい」
最後は尻すぼみになってしまったが、言いたいことを言うと水無は喉の奥で笑った。
「なら……あなたは俺のもの。もうそう言っていい関係になる」
そう言うと、今まで遠慮していた箍を外すように、斎の顎を掬い上げるとすぐに唇を合わせてくれたのだ。
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