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32-1.斎達の結婚式

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 *・*・*







 みのりは今、困った状況の中にいた。


「みーのーりー?」


 あの事件から、前髪を切り少し髪がすっきりした恋人である笑也えみやから、とあるお願いをされたからである。


「ど、どうしても……ですか?」
「ほら、敬語も。戻っちゃってるよ?」
「け、けど……敬語なしって」
「いつでも良いは無しだよ? 僕ら付き合って、そろそろ一年になるじゃないか?」
「そ……う、ですけど」


 呪怨に、八岐大蛇ヤマタノオロチの事件が終わってからそろそろ一年。

 そして、延びに延びたいつき水無みなしの結婚式。穫らはそれに参加するために、今日は万乗ばんじょうの屋敷ではなく、都市の一番大きなホテルに来ていた。

 穫の服装は、笑也の母である珠緒たまおの若い頃の晴れ着を着ていた。化粧も試着の時に珠緒から教わり、けばくない印象になったのだが。

 何故か、今日になって笑也から呼び捨てと敬語を無くしたいと言い出して、すぐに穫のことを呼び捨てにしたのだ。穫はカッコ良過ぎる彼氏の行動に、不覚ながらもドギマギしていた。


「ははは! 良い機会ではないか?」


 今日は佐和さわも出席している。歳は離れているが、斎とも友人関係を築いたことで『琴波ことは』の術師というよりは友人枠での参加だそうだ。穫は一応縁戚。笑也は達川たちかわの次期当主として。


「~~~佐和ちゃんはもう出来てるからって!!?」
「そうは言っても、僕だってたくみとはそう言う関係だからね?」


 先を越されたようにも感じるが、佐和の方が巧と一歩前進の関係を築いている。それを思うと穫は意固地になっているかもしれないが。だが、いきなりやれと言われても無理なものは無理である。


「穫ちゃん弄っとらんと、そろそろ式始まるでー?」


 巧も参加しているので、受付で言われたのか穫達を呼びに来た。なので、おしゃべりはここまでと会場に向かうことになった。

 式は、斎達の希望もあり和式ではなく、ウェディングに。反対派を押し切るのが大変だったらしいが、無事にとりおこなうことが出来たようだ。

 純白のウェディングドレス姿の斎に、グレーのタキシードを着ている水無はとてもお似合いだった。穫達が外に出た後にライスシャワーをしてから、ブーケプルズをすることになり。

 穫もだが、佐和もドキドキとしてしまう。


「せーの!」


 斎が声を上げてから、ブーケを飛ばした。

 じっと待っていると、穫の方にブーケが落ちてきて、思わずキャッチしてしまった。


「やったね、穫!!」


 佐和に肩を抱かれた後、穫は嬉しいが恥ずかしくて、堪らず縮こまってしまった。

 結婚式は無事に終わり、披露宴にも参加してから穫達はマンションに戻って行った。
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