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30-4.倒すために②(月詠視点)
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予想外の行動を起こさせてしまったのは、月詠の失態だ。
なので、姉神であり天照大神であるエミの指示通りに、月詠は閻魔大王に念話で知らせてから目的地へと飛んで行く。
八岐大蛇の本体の封印場所。
尾が完全体に近い形状となったため、本体を消滅させたらどうなるか。神の沽券などどうなってもいい。
ただ、現世と幽世の安寧を思うと、やるしかないのだ。月詠は地獄の上空を急いで飛び、閻魔大王より伝え聞いた八岐大蛇の本体へと向かっていく。
瘴気の濃度が濃くなるにつれて、神であれ息苦しさと似た状態にはなって行くが。苦しんでいる場合ではないと、急いで飛んだ。
指定された場所に行くと、様々な種族の獄卒に加えて閻魔大王自ら月詠を出迎えてくれたのだ。
「閻魔大王」
「月読命様、ご無事で!!」
「姉上達の方が大変です。我々は……こちらをなんとかせねば」
今は動きを見せていないが、尾があれだけ動けるのだから本体に何が起こってもおかしくはない。
「閻魔大王様ぁあああああ!!?」
そうこうしているうちに、その何かが起こってしまったようだ。獄卒が叫び声を上げると、警戒していた八岐大蛇の本体、亡骸が徐々に動き出したのだ。
胴体、頭部、尾。
本体なら死んでいるはずなのに、生き返ったかのように動き出したのた。
だが、月詠は間近にそれを見て、その浅はかな考えは否定した。
「瘴気を取り込み、尾の部分が覚醒したことで……連動しているのでしょう」
勝算がないわけではない。
むしろ、ある方だ。
笑也と関わることで得られた、現世なりの呪法で、月詠はエミに持っておけと渡されたスティックシュガーの袋を何本か懐から取り出した。
「……月読命様。そのようなもので?」
「ええ。笑也のお陰で、我々にも有効に呪物を祓う呪法を知れました。何もしないよりはマシです」
そして、月詠は頭部のはるか上空にまで飛翔して行き。
スティックシュガーを投げて術でさらに巨大化させたのだ。
「弾けろ!!」
袋の先端から、爆発したような音が辺りに響き渡り。頭部に降り注ぐと、まるでナメクジに塩をかけた時のようにしぼんでしまったのだった。
『おおおおお!?』
その様子に下にいた者達は驚きの声を上げたが、すぐに本体の消滅が確認されたか月詠は指示を出した。
そうして、大粒の砂糖の山から発見された八岐大蛇は。
干物のような状態で、月詠の手のひらサイズにまでしぼみ、生命力は感じられなかった。
(あとは……あちら側にどう影響を与えられたか)
それを確認するために、月詠は亡骸を手にしながらエミ達の方に戻ることにした。
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