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30-2.尾の苦しみ(???視点)

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 *・*・*(???視点)









 何がなんだか、もう八岐大蛇ヤマタノオロチの尾はわからないでいた。

 みのりのすべてを我が物にしたかっただけ。

 彼女との約束を成就したいがために、呪怨なども取り込んで色々手を尽くしていただけだと言うのに。

 天津神あまつかみらが、結局は邪魔をしてきた。

 始末したと思っていた、守護鬼らも尾を邪魔してくる。

 穫にかけた証を呪詛返しさせられてしまい、尾は八岐大蛇の力を解放しかけていた。

 本体を得れば、さらに暴動するだけかもしれないが。

 尾にとっては、意識が溶けていくのが苦痛でしかなかった。

 幼い穫と出会い、将来の伴侶としての約束を得た時の、あの誓いが消えていきそうで怖くて怖くて。

 ただの、奇稲田くしなだ姫を得ようとしていたはるか昔の蛇の化け物だった時のような、蛇の意識だけになってしまう。


(嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!?)


 あの頃のようにだなんて、戻りたくはない。

 尾はただ、人間と違うとわかってでも穫と過ごしたかっただけ。たとえ、穫に拒否された事実があっても。尾が望む通りに行動しただけだ。

 だが、その望みをことごとく打ち砕かれてしまい。八つに分けた頭などが制御出来ぬとうめいていると。

 ひとつしかない太く硬い尾っぽの部分に、強烈な痛みを感じたのだった。


【な……に!?】


 穿つような、裂けるような強烈な痛み。

 なんだと振り返りたくても、上からは焼けるような雷術を降り注がれているので、どちらに集中すればいいのかわからない。

 だが、ひとつ。

 考えられるのであれば、憎き素戔嗚尊すさのおのみことかもしれない。

 草薙くさなぎので、切りつけているのかと思ったが。あの気配は前方しか感じ取れないでいた。


【ま……さか……!?】


 穫が意識を取り戻し、十束とつかので切りつけてきたのか。

 何故、何故、と思っても。

 記憶のない穫にとっては、尾は邪魔者でしかない。

 尾は、とても悲しくなってきたのだった。
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