イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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30-1.尾との対決

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 *・*・*








 羅衣鬼らいきが上空から、逃げたくなるくらいの雷の術を八岐大蛇ヤマタノオロチに浴びせていった。

 地面のような場所があるようでない空間だが、みのり咲夜さくやの柄を握りながら、エミや須佐すさが何か攻撃を放っている場所とは違う箇所へと向かう。

 民俗学の講義で、聞いた神話。

 咲夜から聞いた、八岐大蛇の退治された逸話を穫も思い出したのだ。教授から、レポートにすると面白いからとつい最近出されたテーマ。

 色々あり過ぎて、期日はまだ大丈夫なので放置していたが。まさか、自分が実体験すると思わなかった。


「咲夜! 蛇の尾のとこに向かえばいい!?」
【ああ。表側は大神おおみかみらがなんとかしてくださっている。となれば、背後は我らが請け負わなければ】
「うん!」


 自分と約束をしたかもしれないと言う、八岐大蛇と言えど。

 神にとっても、人間にとっても害悪でしかない存在となれば。

 少し、心が痛む箇所はないとは言い切れないが。平穏な生活を送るためにも、これは倒さなくてはいけない。


(……早く……早く!!)


 エミや笑也えみや達と現実世界に戻るためにも、ここでの戦闘は避けられない。

 呪怨も関わっていたらしいが、それは咲夜達が倒してくれたそうだが。とにかく、穫は咲夜の力を借りながら走った。

 走って、走って。

 とにかく走って、尾っぽの部分へと向かうために跳んだりしながら走った。咲夜の力がなければ、そのような軽業は出来なかった。呪怨との戦いがなければ、咲夜の宿主としてそこまで出来なかったが。


【穫!! 前を見ろ!!】


 咲夜が叫んだ。

 八岐大蛇の尾の部分が見えてきたのだ。毒々しい色合いの、爬虫類のような尾。

 苦手、と言えば苦手ではあるが好き好んで触りたいとは思えない、紫と黒の色合いだが、好き嫌いを言っている場合ではない。

 穫は多方面の攻撃を受けまくって、無防備な八岐大蛇の尾の先端手前で止まり、咲夜を構え直した。


「咲夜! どこを切ればいいの!?」
【力加減は私が支えてやる!! 尾の先を切り離すんだ!!】
「わかった!!」


 呪怨の時とは違い、ほとんど実体かもしれない。

 料理以外で、肉を切るだなんて穫には未経験だがやるしかないのだ。

 穫は尾の真正面に到着した時には少し息切れていた。笑也達とは違い、穫は生身の状態で連れて来られたのだ。滞在時間がどーのこーの言われるはずなのに、咲夜を宿しているお陰か大丈夫なようだ。

 そのように、選ばれた人材となっているのなら。

 その力を使わないわけにはいかない。穫は咲夜の柄をしっかりと握ってから、勢いよく振り下ろした。
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