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29-4.雷酒(羅衣鬼視点)
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まだ覚えたての術ではあるが。
主人であり、人間の友人となってくれた穫のためにも、やらずに後悔はしたくない。
羅衣鬼は、須佐の前に立つと、一度跪いた。
「素戔嗚尊様!」
「……羅衣鬼、か!」
「急拵えではありますが、俺が雷酒をこいつにぶつけてみます!!」
「!? 雑鬼が故の力か……やってくれ!!」
「はっ!!」
飛べる距離まで、羅衣鬼は身体を上昇していく。
八岐大蛇の身体は巨大も巨大だが、守護鬼となった羅衣鬼には大した事ではない。頂上となる頭部のところに到達すると、腕を上空に向けて呪を唱えていく。
「数多の雷光……」
地獄ゆえに、雷光は山程ある。雷の系譜を汲んでいる羅衣鬼には、絶好の場でしかない。
「……唸れ唸れ、とこしえの雷光。我が手に宿れ、我が手に広がれ。落とせ落とせ、雷の酒器よ!!」
羅衣鬼の掲げた腕の上に、赤く巨大な盃が現れる。
その中には、地獄に降り注ぐ雷光が落とされていく。かなりの爆音だが、耳を塞いでいる場合ではない。
「轟け!! 『雷酒』!!?」
盃が、羅衣鬼の怒号に合わせて倒れて行く。溜まっていった雷光の酒がこぼれて、八岐大蛇の頭部へと流れて行った。
【ギャァアアアアアアアアアアアアアア!!?】
ただの酒ではない。
雷光をたっぷりと含ませた、痺れるどころか破壊する威力を誇る強い酒だからだ。
八つの頭部が暴れまくり、倒れろと思ったがそこまではなかったようだ。
「っくしょー!? 何度でも食らわせてやる!!」
ここには、雷光も霊気も神力も豊富だ。
穫達が、戦いやすいように、羅衣鬼は何度も雷酒を八岐大蛇にぶつけて行くのだった。
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