イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
143 / 168

28-2.地獄に(笑也視点)

しおりを挟む





 *・*・*(笑也えみや視点)








 現状、みのりが無事かどうかはわからない。

 笑也はエミに施された離魂の術で、魂の状態になってから地獄へと向かっている。

 死ぬまであの世に行くことはない。そう思われるだろうが。笑也は初めてではないのだ。これまで、イタコの仕事をしていて、場合によってはエミに連れて来てもらい依頼人の解決の糸口になるものを調査した。

 概ね、そのような依頼は解決出来たが、今回は違う。

 愛する穫を奪還するため、身体はいつきに預けて万乗ばんじょうの屋敷から飛んだが。幽世あの世の入り口を越えても、穫もだが八岐大蛇ヤマタノオロチの気配を探れないでいた。

 地獄にいるのは確実なのに、いったい何処へ。


「むっき~~!? 見つかんない~~!?」


 笑也に次に穫捜索に尽力をつくしているエミは、白装束が肌けそうになるくらい髪を振り回していた。気に入っている人間である穫をまた勝手に連れて行かれたのだから、神が怒って当然だろう。


「……たしかに」
「気配を巡らせてみても、一向に引っ掛かりません」


 弟神である須佐すさ月詠つくよみも捜索に力を入れている。特に月詠は、尾に力を与えてしまったので若干やつれ気味に頑張っていた。彼がやつれるなどと神に表現してもいいかわからないが。


「~~~~!? ったく、みのりんを肉体ごと今度は連れて行くって何様よ!? 本体にまだ到達してるかしてないかくらいは、月詠わかる!?」
「と、到達……………………は、してないようですね?」
「マジ!?」


 笑也も驚いた。

 とうに、八岐大蛇の本体ごと取り込んでいるのかと思っていたが、穫を優先して後回しにしているのか。だが、逆に後回しにする程、穫を優先させたことに笑也は腸が煮えくりかえそうだった。

 穫とはまだ体を繋げてはいないが、穫は笑也のものだ。未来永劫、彼女だけを愛すると決めたのだから、化け物に連れて行かれたとていい気がしないわけがない。


「穫を連れて行くのが、己が伴侶にするためか十束とつかの自体の主だからか。明確な理由は判明していませんが、先に本体に行きましょう。閻魔大王には許可を出して、あれを破壊する方がいいでしょうし」
「賛成~!」
「応」


 それで穫が尾から解放されるかはわからないが、何もしないよりはいいだろう。

 焦りは募るばかりだが、無造作に地獄を探索するよりは全然いいはず。笑也は自分にそう言い聞かせてからエミに、久しぶりに魂の状態での降霊をしようと提案した。


「我が身に降ろせ、高天ヶ原の御神。魅入られ、魅入る国津神の御許」


 呪文のような、詠唱のように言葉が少しずつ紡がれ、声が高くなっていく。


「我が身に降ろせ、万物の象徴。全てを見通せ、遍く星の声。​────さあ、我が身を見よ」


 エミと笑也がひとつになり、表面上はエミが顕現している状態。


「いっくわよー!!」


 エミは意気込んで、二人の弟神を置いていく勢いで地獄の上空を飛んでいく。笑也はずっとは意識を保てないので、万が一のためにと眠りに沈んでいった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

バツ印令嬢の癒し婚

澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
鬼と対抗する霊力を持つ術師華族。 彼らは、その力を用いてこの国を鬼の手から守っている。 春那公爵家の娘、乃彩は高校3年であるにもかかわらず、離婚歴がすでに3回もあった。 また、彼女の力は『家族』にしか使えない。 そのため学校でも能なし令嬢と呼ばれ、肩身の狭い思いをしていた。 それに引き換え年子の妹、莉乃は将来を有望視される術師の卵。 乃彩と莉乃。姉妹なのに術師としての能力差は歴然としていた。 ある日、乃彩は学校の帰り道にとてつもなく強い呪いを受けている男性と出会う。 彼は日夏公爵家当主の遼真。このまま放っておけば、この男は近いうちに確実に死ぬ。 それに気づいた乃彩は「結婚してください」と遼真に迫っていた。 鬼から強い呪いをかけられ命を奪われつつある遼真(24歳)&『家族』にしか能力を使えない能なし令嬢と呼ばれる乃彩(高3、18歳) この結婚は遼真を助けるため、いや術師華族を守るための結婚だったはずなのに―― 「一生、側にいろ。俺にはおまえが必要だ」離婚前提の結婚から始まる現代風和風ファンタジー

エンジニア(精製士)の憂鬱

蒼衣翼
キャラ文芸
「俺の夢は人を感動させることの出来るおもちゃを作ること」そう豪語する木村隆志(きむらたかし)26才。 彼は現在中堅家電メーカーに務めるサラリーマンだ。 しかして、その血統は、人類救世のために生まれた一族である。 想いが怪異を産み出す世界で、男は使命を捨てて、夢を選んだ。……選んだはずだった。 だが、一人の女性を救ったことから彼の運命は大きく変わり始める。 愛する女性、逃れられない運命、捨てられない夢を全て抱えて苦悩しながらも前に進む、とある勇者(ヒーロー)の物語。

髪を切った俺が『読者モデル』の表紙を飾った結果がコチラです。

昼寝部
キャラ文芸
 天才子役として活躍した俺、夏目凛は、母親の死によって芸能界を引退した。  その数年後。俺は『読者モデル』の代役をお願いされ、妹のために今回だけ引き受けることにした。  すると発売された『読者モデル』の表紙が俺の写真だった。 「………え?なんで俺が『読モ』の表紙を飾ってんだ?」  これは、色々あって芸能界に復帰することになった俺が、世の女性たちを虜にする物語。 ※『小説家になろう』にてリメイク版を投稿しております。そちらも読んでいただけると嬉しいです。

あやかし神社へようお参りです。

三坂しほ
キャラ文芸
「もしかしたら、何か力になれるかも知れません」。 遠縁の松野三門からそう書かれた手紙が届き、とある理由でふさぎ込んでいた中学三年生の中堂麻は冬休みを彼の元で過ごすことに決める。 三門は「結守さん」と慕われている結守神社の神主で、麻は巫女として神社を手伝うことに。 しかしそこは、月が昇る時刻からは「裏のお社」と呼ばれ、妖たちが参拝に来る神社で……? 妖と人が繰り広げる、心温まる和風ファンタジー。 《他サイトにも掲載しております》

〈完結〉どうやら私は二十歳で死んでしまうようです

ごろごろみかん。
キャラ文芸
高二の春。 皆本葉月はある日、妙な生き物と出会う。 「僕は花の妖精、フラワーフープなんだもん。きみが目覚めるのをずっと待っていたんだもん!」 変な語尾をつけて話すのは、ショッキングピンクのうさぎのぬいぐるみ。 「なんだこいつ……」 葉月は、夢だと思ったが、どうやら夢ではないらしい。 ぬいぐるみ──フラワーフープはさらに言葉を続ける。 「きみは20歳で死んじゃうんだもん。あまりにも不憫で可哀想だから、僕が助けてあげるんだもん!」 これは、寂しいと素直に言えない女子高生と、その寂しさに寄り添った友達のお話。

【完結】国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く

gari
キャラ文芸
☆たくさんの応援、ありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。  そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。  心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。  峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。  仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。  ※ 一話の文字数を1,000~2,000文字程度で区切っているため、話数は多くなっています。    一部、話の繋がりの関係で3,000文字前後の物もあります。

クライエラの幽微なる日常 ~怪異現象対策課捜査file~

ゆるり
キャラ文芸
正義感の強い警察官と思念を読み取る霊能者によるミステリー風オカルトファンタジー。 警察官の神田智輝は『怪異現象対策課』という聞き馴染みのない部署に配属された。そこは、科学では解明できないような怪異現象が関わる相談ごとを捜査する部署らしい。 智輝は怪異現象に懐疑的な思いを抱きながらも、怪異現象対策課の協力者である榊本葵と共に捜査に取り組む。 果たしてこの世に本当に怪異現象は存在するのか? 存在するとして、警察が怪異現象に対してどう対処できるというのか? 智輝が怪異現象対策課、ひいては警察組織に抱いた疑問と不信感は、協力者の葵に対しても向いていく――。 生活安全部に寄せられた相談ごとを捜査していくミステリー風オカルトファンタジーです。事件としては小さなものから大きなものまで。 ・File→基本的には智輝視点の捜査、本編 ・Another File→葵視点のファンタジー要素強めな後日談・番外編(短編) を交互に展開していく予定です。

処理中です...