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27-5.呪怨らしき存在(咲夜視点)
しおりを挟む*・*・*(咲夜視点)
まったくにもって面倒な事態だ。
どう言うからくりかはわからないが、今この場には己と穫が消滅させたはずの『呪怨』がいるのだ。
気配も、姿も、何もかも。
数ヶ月前に消滅させたはずが、今、咲夜や羅衣鬼の前に存在しているのだ。虎に似た、怨念の塊。
唸り声を上げて、咲夜達の前に立っていた。
「…………此処から出るには、お前を倒さなくてはいけないのか」
【と…………つかぁああああああ゛!?】
「…………聞く耳持たず、か」
咲夜を判別は出来ていても、意識はあまり存在していないようだ。しかし、どうして自分達もだが呪怨もこの場にいるかはわからない。
羅衣鬼に己を持たせて戦うのも出来なくはないが、穫とは違って霊力の質が違う。
目の前の呪怨らしきものを倒すには心許ないだろう。
仕方ないので、咲夜は己の手に半実体化させて柄を握りしめた。
「お、俺手伝う? 大人しくしといた方がいいか??」
「巻き込まれたくなければ大人しくしておけ」
「うん!」
守護鬼になって、未だ日の浅い羅衣鬼では咲夜と違い呪怨には立ち向かっても殺されかねない。咲夜も穫のもとに顕現して日が浅いが、万乗のかつての術師らに憑依していたのだから経験の差が違うのだ。
剣を構え、地ではない地面を蹴って呪怨に向かって駆け出す。
呪怨は避けようとはしない。
ならば、と剣を振り下ろしてみたが。手応えがなかった。まるで霧を裂いたような感覚。
しかし、呪怨らしき存在は確かにある。
跳躍して離れてみると、呪怨らしきものは唸り声を上げているだけ。
「……面妖な」
穫はおそらく無事だと思うが。
八岐大蛇の尾になにかされているかどうかわからない。
咲夜達が存在しているから、まだ死してはいないとは思うが。この呪怨らしきものの側に咲夜達がどうしているのかもわからない。
しかし、もし八岐大蛇の尾が呪怨だったものを何かしらの方法で取り込んだとしたら。
厄介この上ない。
咲夜は一度羅衣鬼の元へ戻った。
「どーだ?」
羅衣鬼は傍観していただけだが、咲夜を気遣ってくれていた。
「……手応えがない。だが、何かしらの方法はあるだろう」
「つーと?」
「羅衣鬼、私を巻き込んでいいから雷撃をありったけあいつにぶつけろ」
「大丈夫なのかよ?」
「忘れたか? 私がかつて雷の神の所有物だったのを」
「おー」
その神もだが、エミらも今どこにいるかもわからない。
何より、今穫にはいち早く駆けつけたいのだ。最悪の結果になる前に、咲夜はもう一度呪怨らしきものに向かって駆け出す。その直後、暗い空間に雷が爆ぜた。
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