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27-4.咲夜と羅衣鬼(羅衣鬼視点)
しおりを挟む*・*・*(羅衣鬼視点)
何処だ、ここは。
羅衣鬼は亜空間のような暗くて冷たい場所に放り出されていた。
主人である穫の影にいると言うのに。なんと、冷たくて気味が悪い場所なのだろうか。
しかし、羅衣鬼ひとりだけではない。咲夜も倒れていた。彼女は顕現していたのに、羅衣鬼と共にこの空間に放り出されたのか。
なんにせよ、ひとりでないのは助かった。
羅衣鬼は咲夜の肩を揺すって起こすことにした。
「咲夜、咲夜!? 起きてくれ!!」
「…………?」
何度か揺すっただけで、咲夜は目を開けてくれたのだが。目の光が虚ろであった。この空間に飛ばされる前に、八岐大蛇の尾に何か術を施されたのか。
「しっかりしてくれ!! 俺は守護鬼になって日が浅いんだから、十束のあんたがいなきゃ穫が危ない!!」
「……み、のり」
羅衣鬼が主である穫の名を出せば、咲夜の目の光が少しずつ取り戻してきた。やがて、咲夜は完全に意識を覚醒させると起き上がったのだ。
「起きたか?」
「……ああ。羅衣鬼、我々がいる場所はわかるか?」
「それがちっとも。穫と離れさせられたわけじゃねーようだし」
繋がりは感じる。
だが、少し距離があるように思えるのだ。蜘蛛の糸に絡まり、垂らされて宙に浮いてもいるような。
言葉では表し難い状態だ。元はただの雑鬼でしかなかったただの妖怪だ。このように強大な力に触れたことなどほぼない。
「八岐大蛇の真意。穫だけでなく……おそらく、私も手に入れようとしているが」
「わかんのか?」
「素戔嗚尊様の草薙剣とは違う。私は天津神が所持していた剣だ。手にしたい者は多い」
それと、と咲夜は立ち上がってからいきなり、奥の方に術を使って何かを爆破させた。
「ちょっ!?」
「油断するな、羅衣鬼。忌々しいが……此処には少々懐かしい気配も感じるのだ」
「な、何が……?」
確認のために咲夜に問いかけるが、意味のないことはすぐにわかった。
咲夜が術を放った場所から、さらに冷たくて陰気でおどろおどろしいものが現れたのだから。
【…………の、れ……と……つかああああああああ!!?】
「ひぃ!? なんで呪怨がいるわけ!?」
数ヶ月前に、穫と咲夜が倒した万乗に巣食った呪いの塊。
それが何故か、今羅衣鬼と咲夜の目の前にいたのだ。
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