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26-3.万乗の本家
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斎がこちら側に出向く事の方が多く。
万乗の本家に行くのは初めてだった。結婚式についても呼ばれているわけではなかったため、行く機会がないと穫は思っていたからだ。
だが、八岐大蛇がまた復活しないとも限らないから、穫自身が出来ないことをしないままでいるのも良くないと思い。
笑也に咲夜、あと佐和も来てくれたので、共に万乗の本家に笑也の車で向かう。
ナビに既に住所検索はかけたため、こちらのマンションからは然程離れていないようだ。斎と水無がいつも徒歩で来ていたらしい理由もわかった。
以前、呪怨の事件の時に水無が斎を抱えて飛び出した時は驚いたが、流石にしょっちゅうはやっていないはず。
本家の屋敷らしい場所に到着すると、車の窓から見えた『屋敷』は洋風のバカでかいお屋敷だった。高級住宅街の真ん中に位置するそれは、達川の本家に匹敵するかそれ以上に大きい。
笑也が大きな門に設置されてるインターフォンの前に車を止めて、ひとりで降りてから中にいる斎もしくは、使用人の人とやり取りをして。
門が自動で開いてから、車に戻って屋敷の中に入っていく。駐車場のところには、笑也の車に負けないくらいに様々な高級車が停まっていた。
「ようこそ、おいでくださいました」
穫や佐和も車から降りると、燕尾服に似たタキシードを着ている初老の男性がひとり立っていた。十中八九、この屋敷の使用人でもトップクラスかもしれない。
「こちら側の都合で、当主殿のお手を借りることになったんです。遅くなり、すみません」
「いえいえ。御当主もお待ちしております。準備も色々なさっていらしたもので、ちょうど先程完了致しました」
「なるほど。穫ちゃん、琴波さん、行こうか?」
「はい!」
「ええ」
服装は正装でなくてはいいとは言われたが、動きやすい格好でと佐和と選んでシンプルなものを着ている。佐和は他家とは言え、本家に伺うからと着物でも巫女に近いような緋袴と白い着物を着ている。やはり、陰陽道と言うのに、詳しいからだろうか。
とりあえず、使用人の後ろに着いていくと、どこもかしこも豪華で触ったら壊してしまいそうで怖かった。
斎が待機しているらしい部屋に案内されると、中から出てきたのは斎でも水無でもない。もう少し年上な、物腰の柔らかそうな綺麗な男性が扉を開けてくれたのだった。
「いらっしゃいましたか?」
「はい、由良様。達川様御一行をご案内させていただきました」
「わかりました。あとはこちらで」
「失礼致します」
と言うと、使用人の男性は本当にいなくなってしまった。
穫は男性と目が合うと、彼は柔らかい笑顔を穫に向けてくれた。
「呪怨の時以来ですが、直接お会いするのは初めてですね? 水無と同じ、分家の由良と申します」
「! み、穫です! はじめまして!」
「ふふ。元気がよろしいことで」
さあ、と中に入るように促されると。斎は薄紫の着物を着て、椅子に腰掛けていた。側には、黒い着物を着た水無が控えている。
「いらっしゃい、穫さん」
「…………」
本当に、この二人が近いうちに結婚するのが未だに信じられない。美男美女の組み合わせではあるが、性格が違い過ぎるからだ。
だが、今日は世間話をしに来たわけではない。
「よろしくお願いします」
お辞儀をした後に、咲夜と羅衣鬼を顕現させて。
結界師としての、術講義と言うのを真剣に受けることになった。
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