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26-2.神の失態(月詠視点)
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エミが察知した通り、最悪の結果のひとつが目の前で起きていた。
阿鼻の地獄行きとなった、呪怨のところに八岐大蛇の尾が行くと思うだろうか。
しかも、奴を取り込んで力をつけるなどと。
見つけた瞬間にエミが光の矢を放っても、もう間に合わず。
尾は、呪怨を欠片も残さずに取り込み、須佐が切り裂いた時よりも、美しく人型へと変貌したのだ。
「……最悪ですね」
万乗の積年の怨み辛みになどが形成した呪怨を全て取り込んだ。
しかも、最後に十束剣である咲夜が呪怨を落とした力も加わっている。
つまりは、神に連なる力を得てしまったと言うこと。最悪の最悪な事態になってしまった。
「まだ取り込んだばかりよ。倒すしかないわ!!」
姉神の方は、今だからと奴に向けて弓矢を何度も放っているが、幾度放っても亡者を消滅させるだけになってしまっている。
「姉者、あまり亡者を消滅させるな」
「だからって、あいつが避けまくんのよん!? ウザいわぁああ!!」
「今近づくのも、良策とは言えませんしね……」
魔のものとは言え、天の者を消滅させれるとは限らない。だが、魔が魔を取り込んだ今ではどうなるか。
尾の方は、避けながらも気味が悪いように妖しく笑っているだけだ。
「邪魔があるから、本領発揮が出来ない。……神って面倒だね?」
「なにおぅ!?」
「姉者、挑発に乗るな!?」
「なんであんたの方が冷静なのよん!?」
「俺だってムカついてる!!」
姉と弟がこの状況では、月詠が動くしかない。足元に力を溜めていき、尾の足元に素早く移動させる。
「堕とすなら……さらに堕としましょうか?」
黄泉の神、暦の神、月夜の神だとか様々に言われている月詠であるからこそ成せる技。
尾が気がついた時には、奴は地獄の底の底に落ちていってしまう。
そのような技を繰り出したのであるが。
「くふふ……? 僕にさらに力を与えてくれるだなんて嬉しいねえ?」
落ちるどころか、浮かんだ尾は。
溢れ出てくる陰の瘴気を取り込んでいってしまったのだ。
「兄者!?」
「月詠のアンポンタン!?」
「私も予想外過ぎですよ!?」
これはもう、兄弟揃って唸るしか出来なかった。
すぐに穴は閉じたが、もう遅く。尾はさらに妖しく美しくなってしまい、阿鼻から現世に向かって飛んで行った。
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