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24-5.奇稲田姫(須佐視点)
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姉神である天照大神が来るまで、須佐は先に地獄を探索していた。
己が先日消滅させたはずの、八岐大蛇の尾。
それの魂の感知があったと、兄神である月読命へと閻魔大王から知らせがあったそうだ。
だから、月詠がエミを呼びに行っている間に須佐が探しているのだ。
(……何処だ?)
気配を探ってみるが、微か過ぎて神である須佐とて感知が難しい。
宙に浮き、地獄全体を見渡してはいるが八岐大蛇の本体は阿鼻地獄に保管されている。大王の補佐官達が警備をしているとは言え油断は出来ない。
かなり苦戦をした前回通りに、尾が復活するとは思えないのだ。
「素戔嗚様……」
探っている途中に、妻である奇稲田姫がやってきたのだ。彼女は今でも須佐の妻であり、かけがえのない存在である。
彼女が来たと言うことは、腰に携えている草薙剣の事だろう。
「剣か?」
「はい。もしもの事があってはなりませぬ。わたくしの力をお使いください」
「頼む」
「はい」
剣を抜いて、彼女の手の上に刃を置き、奇稲田姫はそっと目を閉じた。途端に、彼女の手から赤く光り出した。
「……我が力。我が神代の魂。宿れ宿れとこしえに。悪しき輩を打ち砕かん」
カッ、と須佐達を取り囲む光がほとばしったがすぐに消えてしまい。赤い光が宿った剣が完成した。奇稲田姫の力が宿った剣だから、生半可な剣ではなくなっている。
「お前は屋敷に帰れ。巻き込み兼ねないからな?」
「はい。お気をつけて」
大切な妻。
子供達ももちろん大事だ。それぞれに妻や夫、子を持っているとは言えど。
エミともはるか昔に契約で子を成したが、あれは別次元だ。お互いに交わったわけではない。
須佐は奇稲田姫が帰還するのを見届けてから、阿鼻を中心にして地獄にいるはずの尾の魂を探すのを再開した。
簡単に見つかるわけにはいかないが、八岐大蛇の復活は阻止しなくてはいけない。
剣を手に持ったまま、須佐は飛んで行くのだった。
そうして、阿鼻の領域の手前で見つけた。
「いたか!?」
微かな、本当に微かな魂の反応。
切り掛かろうとすると、誰かに肩を掴まれた。
「急ぎ過ぎよ、須佐?」
「……姉者」
「戦うのであれば、我らもいます」
「兄者」
エミと月詠、二人が揃ったのであれば。天の神の頂点に立つ三神として、三人であの尾に向かって飛ぶことにしたのだった。
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