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24-4.羅衣鬼と穫と尾(羅衣鬼視点)
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あれはまだ、幼い穫と遊ぶ事が出来ていた時。羅衣鬼も雑鬼としてそこそこ力があった頃だ。
当時、羅衣鬼もだが穫も友達がほとんどいなかったせいで、遊ぶ相手も限られていた。だから、視えていた羅衣鬼が手を差し伸べて遊び相手になったのだ。
『みーのーり! あーそぼ!』
『うん! 鬼くん、あーそーぼ!』
今風の遊びから、二人で出来る古い遊びやらを色々と。
だが、だんだんと二人で遊ぶのも限界になってきた時に、出会ったのだ。
子供の幽霊のような、不思議な妖に。
最初は気弱で、穫や羅衣鬼が遊んでいたのを影から覗くような、本当に本当に弱い存在。
だから、穫が声をかけてやるまで羅衣鬼も気に留めていなかった。
『!?』
『君も、遊びたいのー?』
『い、いの……?』
『うん! あ、鬼くんはいーい?』
『いいぞー?』
それからだった。
ひとり増えただけで、かくれんぼも鬼ごっこもなんだって。少しドジだった彼が増えてから楽しくなった。
だがいつしか、穫を襲うようになってきた呪怨の手の者によって、三人は引き離されてしまったのだ。彼はどうしたかはわからないが、羅衣鬼は離れていても穫を助けようとした。
彼に劣らずドジな結果で終わってしまったが。
その彼は、穫に多少の恩があるはずなのに姿を見せずにいたけれど、それがあの八岐大蛇の尾だとはとても思えない。
それくらい、当時の羅衣鬼並みにか弱い存在だったからだ。
しかし、羅衣鬼が思い当たる事と言えば、それだけしかない。
「だから、俺もあいつかもって事くらいしかわかんないんだ」
「…………私、思い出せない」
「穫にとっても、ちょっとだけしか遊んでねーからな? 俺でも思い出すの大変だったろ?」
「うん……」
あれから十数年。
穫には笑也と言う協力者と恋人が出来た。羅衣鬼もエミによって穫の守護鬼になれた。呪怨の問題も解決したし、もう大丈夫だろうと思った矢先に八岐大蛇の新たな問題。
何か、何かきっかけがあるとすれば、あの時の彼かもしれない。
だが、わずかな時間で彼は穫に執着するような何かを得られたのだろうか。呪怨の問題が解決するまで放っておいていたのに。
『約束ね?』
『や……くそく?』
『うん、指切りげんまん』
頭を抱えながら唸っていたら、思い出した。
穫が彼と何か約束事をしていたのを。内容までは思い出せないが。
「穫、あいつと何か約束してなかったか?」
「……約束?」
「妖と約束すると、霊力のある人間が力を与える事例もあるけど……」
「え」
「それや!」
「それだ!」
そこから少しずつ、穫の霊力が彼に流れて八岐大蛇の力を回復させていったかもしれない。
憶測ではあるが、笑也達もそこに行き着いたのだった。
「わ……たし、のせい?」
穫が落胆するのも無理はない。
自分がきっかけで、自分の命もだがエミ達大神にも迷惑をかけていると思っているだろう。
そうじゃない、と言うように、笑也とは逆に座っている咲夜が抱きついたのだった。
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