123 / 168
24-1.場所を考えて
しおりを挟む*・*・*
巧と佐和が付き合うことになったのは、斎達が帰ってすぐにLIMEのメッセがきたことでわかった。
穫と笑也が穫の部屋に行くと、佐和は隅っこでうずくまっていて巧はそれを宥めていた。
「頼むわ、佐和! 機嫌直して!?」
「…………うぅ」
「巧、琴波さんに何したの?」
「な! 気持ち通じ合ったんやから、キスしただけやで!?」
「…………それだよ」
ムードはあったかもしれないが、場所が場所だ。
ここは巧の自室ではなく、穫の部屋だ。友人の部屋でおそらくファーストキスをしたことが、いくら佐和でも恥ずかしさと少しの罪悪感でいっぱいなのかもしれない。
佐和を好きだと気づいて、可愛くなったと思った巧が全面的に悪いわけではないが。
「佐和ちゃん、大丈夫?」
穫が近づくと、佐和は腕を伸ばしてきて穫に抱きついてきた。顔は見えなかったが、耳と首が真っ赤なのでやはり恥ずかしい状態なのがよくわかった。
ぽんぽんと背を叩いてあげると、穫に抱きついてきた腕の力が強くなっていく。
なので、とりあえず。
「笑也さん、巧さんへのお説教よろしくお願いします」
「うん、任せて?」
「はぁ!?」
「ほら、巧。行くよ?」
「ちょっ!?」
笑也に引きずるようにして巧は連れて行かれて、ドアが閉まる音が聞こえてきたら穫はまた佐和の背中を軽く叩いた。
「行っちゃったよ?」
「……………………迷惑かけるね」
「全然。巧さんが浮かれ過ぎだもん」
「……嫌では、なかったんだ」
「わかるよ? 大好きな人とだもん。嬉しくないわけがないよね」
「……ああ」
穫から離れた佐和の顔は、耳よりも真っ赤になっていて、不謹慎ではあるがとても可愛らしく見えた。
普段の男のような雰囲気もカッコいいとは思っていたが、それでも佐和は女の子だ。女の子らしいところを見ても、穫は彼女を可愛いとも思えた。
ヨシヨシと頭を撫でてやってから、笑也に影響されて買うようになったインスタントのカフェオレを彼女に淹れてあげた。
「とりあえず、おめでとう!」
「……うん。ありがとう」
まだ恥ずかしさが勝っているのか、モジモジしている姿も可愛く見えて、穫には嬉しかった。
「ちゃん付けじゃなくなったんだね!」
一度しか聞いていないが、巧が呼び捨てにしていたからだ。穫が佐和に聞くと、佐和はさらに縮こまっていく。
「うん。……僕も、実はさん付けになった」
「おお! 一歩前進!」
「うん……達川氏、手加減してくれているかなあ?」
「どーだろ? 幼馴染さん同士らしいし、遠慮なく言っちゃっているかも」
「……別に嫌だったわけではないのに」
「けど、勢いだからって……ここ私の家なのに」
「まあ……うん」
やはり、ムードもだが場所も考えて欲しいとは思う。
友人と世話になっている人が結ばれたとは言え、自宅でキスをしたと言う事実は事実。穫は、しばらく忘れることが出来なさそうだった。
1
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
星詠みの東宮妃 ~呪われた姫君は東宮の隣で未来をみる~
鈴木しぐれ
キャラ文芸
🌸完結しました!🌸平安の世、目の中に未来で起こる凶兆が視えてしまう、『星詠み』の力を持つ、藤原宵子(しょうこ)。その呪いと呼ばれる力のせいで家族や侍女たちからも見放されていた。
ある日、急きょ東宮に入内することが決まる。東宮は入内した姫をことごとく追い返す、冷酷な人だという。厄介払いも兼ねて、宵子は東宮のもとへ送り込まれた。とある、理不尽な命令を抱えて……。
でも、実際に会った東宮は、冷酷な人ではなく、まるで太陽のような人だった。
老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜
二階堂吉乃
ファンタジー
瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。
白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。
後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。
人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】国を追われた巫女見習いは、隣国の後宮で二重に花開く
gari
キャラ文芸
☆たくさんの応援、ありがとうございました!☆ 植物を慈しむ巫女見習いの凛月には、二つの秘密がある。それは、『植物の心がわかること』『見目が変化すること』。
そんな凛月は、次期巫女を侮辱した罪を着せられ国外追放されてしまう。
心機一転、紹介状を手に向かったのは隣国の都。そこで偶然知り合ったのは、高官の峰風だった。
峰風の取次ぎで紹介先の人物との対面を果たすが、提案されたのは後宮内での二つの仕事。ある時は引きこもり後宮妃(欣怡)として巫女の務めを果たし、またある時は、少年宦官(子墨)として庭園管理の仕事をする、忙しくも楽しい二重生活が始まった。
仕事中に秘密の能力を活かし活躍したことで、子墨は女嫌いの峰風の助手に抜擢される。女であること・巫女であることを隠しつつ助手の仕事に邁進するが、これがきっかけとなり、宮廷内の様々な騒動に巻き込まれていく。
※ 一話の文字数を1,000~2,000文字程度で区切っているため、話数は多くなっています。
一部、話の繋がりの関係で3,000文字前後の物もあります。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

トラックに跳ねられて死んだので絶対異世界転生したと思ったのに、ただの浮遊霊になってしまったようです
加藤伊織
ファンタジー
楽しみな週末を控えて、金曜の夜に「私」は死んだ――。
トラックに跳ねられて。
これは! 100%異世界転生のフラグ!
転生先は乙女ゲーム? それとも悪役令嬢かスローライフか!?
わくわくしながら「その時」を待っていた「私」は、何故か異世界転生することもなくふわふわと漂い続けていた。
オタクな「私」と霊感持ちの「推し作家」の除霊コメディ。
この小説は他の小説サイトにも掲載しております。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる