イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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23-1.こちらも初恋(佐和視点)

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 *・*・*(佐和さわ視点)








 自覚、をおそらくしたのだと思う。

 だが、男のように生活してきても男になったことはない。

 男の心情になり切ろうとしたって、所詮は女だ。

 佐和は、今猛烈に自分の感情と戦っていたのだった。


「……大丈夫、佐和ちゃん?」


 みのり笑也えみやの実家に行ってから数日後。

 佐和はだんだんと自分の恋心を自覚してきたので、彼女に相談に乗ってもらうことにした。

 穫の方は、挨拶に行ってからは日々ご機嫌さんなのに、このような重い話を持っていくのは少々罪悪感はあったが。


「……大丈夫……いや、あんまり大丈夫ではない」
「どっち?」
「……穫に指摘された事が現実になるとは思わなかったんだ」
「私が?」
「…………たくみ氏についてだ」
「あ!…………あぁ」


 口にした事で、やっと思い出したのだろう。こう言う鈍感さ加減も、笑也にとっては可愛いかもしれないと佐和ですらそう思うのだから。


「彼も術師であるのに、僕には普通の女の子のように扱ってくれたんだ。それが……どうもくすぐったくて」
「巧さん、元気だけど気配り上手だもんね?」
「……幻滅しないのかい?」
「何が?」
「僕が……恋だなんて」
「なんで? 佐和ちゃんも女の子なのに?」


 穫だけだろう。

 少なくとも、同じ女として佐和を女と扱ってくれる相手は。

 もちろん、巧もだがそれは歳下の女としてだろう。笑也と同じ二十六とは言え、もうすぐ二十歳の子供みたいな女を恋愛対象に見てくれるかどうか。

 それを直接聞くのが怖くて、つい友人に助けを求めるとは。なんでもひとりで解決しようとしていた自分ではなくなってしまった。

 恋愛とは、げに恐ろしやである。


「そう言ってくれるのは……多分穫だけだ」
「巧さんも大丈夫だと思うよ?」
「根拠は?」
「巧さん、女の子には優しいから?」
「……僕とて、一応女だから?」
「自信持とうよ?」
「うーん」


 たしかに、離魂の術から目覚めるまでの介抱をしてもらった。

 着替えさせられたので、ある意味裸が見られたも同然。

 そこに気づいて、佐和は穫の家のローテーブルに顔を伏せてしまった。


「ど、どうしたの!?」
「いや……正当な理由があれど、巧氏に裸を見られたんだ」
「はへ!?」
「着物から着替えさせられただけだ。寝苦しくないように介抱してもらっただけだよ……」
「あ、ああ…………でもさ?」
「うん?」


 穫が何故か、立ち上がった。

 そして、マンションの住人がフロントに繋げる時に使う内線を使い出したのだ。

 まさか、と佐和も立ち上がろうとしたら、穫は息を吸い込んでから内線の受話器に向かって叫んだ。


「巧さん、今すぐ私の部屋に来てください!!」
『は!? どないしたんや、穫ちゃん!?』
「ちょっと、女の子として巧さんに言いたい事があるんです!!」
『……俺に?』
「いいから、早く来てください!!」
『お、おう……?』


 と言うやり取りの勢いを目の当たりにして、佐和は介入することが出来ず。

 数分後に、巧がやって来て鼓動が早くなるのをどうにかしたかった。
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