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22-2.息子の恋人(珠緒視点)
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写真で見たよりも、随分と可愛らしい女性だった。
性格は控えめな部分もあるが、きちんと返事をする辺り、普段は元気な女性であるのだろう。エミ、と息子と一緒に呼んだ天照大神にも随分と気に入られていたから。
万乗の分家の分家筋で、霊視能力以外はほとんど普通の人間と変わりなかったのが。珠緒の霊視能力を使うと内側に絶大な力を秘めているのがわかった。
それがおそらく、息子から聞いていた十束剣なのだろう。あと、雑鬼を大神が守護鬼にさせたとも聞いているので、その力も感じた。
一見すると、ただの可愛らしい女性なのに。それらがあるとわかれば普通の女性ではない。今も大神に抱きつかれてあたふたしているのに、能力だけで言えば息子の笑也だけでなく、珠緒達も凌駕するだろう。
「え、エミさん?!」
【なぁに? みのりん抱き心地いいからいいでしょん?】
「え、そんな!」
「エミ、穫ちゃんは僕のだよ?」
と言って、穫の肩を抱き寄せて大神から引き剥がすのだから、余程好意を抱いているのだろう。でなければ、将来性を思って珠緒達に紹介するわけがない。
「え、笑也さん!?」
【相変わらず、みのりんには独占欲丸出しねん?】
「わかっているんなら、は・な・れ・て?」
【はいはい】
笑也に言われて観念したのか、次は珠緒に抱きついてきた。少しぶりだが、なんだかこそばゆく感じた。
「大神も余程気に入られていらっしゃるのですね?」
【みのりんだからよん? あんた達も気に入ったでしょ?】
「ええ」
「それはもう」
「あ……ありがとう……ござい、ます」
笑也からは解放された穫は、まだ恥ずかしさが残っているのか顔どころか首まで真っ赤になっていた。付き合い自体が、息子と同じく初めてかもしれない。ほんの少し心配にはなったが、息子にはちょうどいいだろう。手慣れた女性であれば、父親に似た美麗な顔立ち目当てで付き合うとも思えるから。
だが、穫はそうでいないとよくわかった。
息子と真摯に向き合っているのが、よくわかったからだ。媚を売ることもなく、ただ隣で恥ずかしそうに座っているだけ。その点が、珠緒には好ましかった。
【みのりん、一段と固いわねぇ?】
「き……緊張、します、よ!」
【ただ、笑也の親だけじゃない?】
「だって、初めてお会いしたんですから!」
あだ名で彼女を呼ぶと言うことは、本当に彼女を気に入ったという事。
随分と昔、珠緒も呼ばれてはいたが当主を継いでからはなくなった。少し羨ましくも感じたが、もう過ぎたことだ。
それよりも、穫には色々聞きたい事があった。
「穫さん? 笑也の部屋のハウスキーパーさんでもあるらしいけれど、あの部屋を片付けるのは毎回大変じゃない?」
「い、いえ! 今はらい……えっと、エミさんに守護鬼にしてもらった鬼君が食べてくれるので、大丈夫……です」
「守護鬼が?」
【雑鬼だったから、なんでも食べれるのよん? みのりんのご飯は、インスタント食品とかもアレンジしてくれるから……美味しいわぁ】
「この前はクリームコロッケ作ってくれたしね?」
「クリームコロッケ!」
「明良さんの大好物だもの?……穫さん、ご迷惑でなければ一緒に作らない?」
「え、いいんですか!?」
「ええ。明良さんがこの顔だもの?」
食べたいと言う顔が全開になっているのだから、作らないわけにはいかない。
だが、穫のせっかくのワンピースを汚してはいけないと思い、珠緒のお古の洋装を貸すことにした。
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