上 下
114 / 168

22-1.許せない(???視点)

しおりを挟む





 *・*・*(???視点)








 みのりが楽しんでいる。

 良くない、良くない、全然良くない。

 己の隣ならまだしも、あの大神おおみかみを降ろす事が出来る異質のイタコの横で。

 許せない、許せない、許せない。

 そんな事は許せなかった。

 穫は、この八岐大蛇ヤマタノオロチのもの。

 十束とつかのつるぎも含めて、我らの物である。達川たちかわなどと言う、イタコに特化しただけの霊能者に穫を渡すわけにはいかない。


『……約束したのは、僕の方が先なのに……』


 穫は覚えていないだろう。ずっとずっと小さな子供だったから。

 だが、尾は覚えている、今も鮮明に。

 あの時交わした約束を。


【指切りげんまん!】


 わざわざ指切りまでしたのだ。その呪法は今でも有効状態。

 穫と尾の繋がりは、まだ切れていない。

 大神もだが、あのイタコもいつ気づくか。

 尾が完全に回復したら、いよいよ穫を手に入れる。もちろん、この地獄にいるのだから八岐大蛇の本体も手に入れる。

 詰めが甘い、天の大神達よ。

 八岐大蛇はもうすぐ完全復活するのだ。

 常世とこよも現世も、何もかもが。

 八岐大蛇のための時代になるのだから。


『……だから、穫は手に入れる』


 その妻として相応しいのは、彼女しかいないのだから。

 だが、今はあのイタコの隣がいいと言うのなら、少し夢を見させてやろう。

 尾は、傷を癒すために眠りにつくのだった。
しおりを挟む

処理中です...