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21-3.達川家に①
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そして、達川の本家に行く当日。
移動はもちろん笑也の車。乗車は穫と笑也で、エミは先に達川の家に行くと飛んで行き咲夜と羅衣鬼はいつも通り影に潜ってもらう。
巧はマンションのコンシェルジュの仕事が自分しかいない日なので行けないそうだ。佐和は履修必須の講義なので同じくこれない。
笑也達がいるとわかっていても、緊張が高まって穫は座席に座ってからずっとかちこち状態だ。
「そんな緊張しないで?」
笑也が穫の髪を撫でてくれたが、落ち着くことが出来なかった。
「だ、だって……笑也さんのご両親にお会いするん……ですし」
「そうだけど、能力以外は割と普通の親だよ?」
とりあえず、と車を発進させるのに笑也は穫から手を離した。
達川の家は都会から少し離れたところにある山の中らしい。高速に乗ってから、笑也の口から教えてもらった。
「……その、笑也さん」
「うん?」
「ご実家って、お金持ちですか?」
「まあ、そうだけど。気になった?」
「笑也さんが普段あのマンションに住んでいるので、ちょっと」
「ああ、なるほど。けど、金銭感覚については一応普通の人達と同じに育てられたんだ。学校も普通の公立のとこに行っていたし」
「! 意外です」
「虚弱体質はエミのお陰でなんとかなったし、母さんも普通の人間の生活をさせたかったからだって」
「けど、ああ言うとこに住んでいるのは……?」
「広いとこじゃなきゃ、エミもだけど須佐達をもてなせないからね?」
「なるほど」
最近は少し減ったが、あの腐海の森状態はこの間も酷かった。あの八岐大蛇の尾を、とりあえず倒したが切っ掛けで大いに飲み食いすることになったので、ゴミ処理に羅衣鬼が頑張ってくれた。ストックの冷凍食品やインスタントをすっからかんにするくらいだったので、思わず制限を設けそうになったが。
「でも、まあ。広い部屋の方が穫ちゃんもゆっくり出来るでしょ?」
「え?」
「……まだわかんなくていいや」
「??」
よくわからない質問には首を傾げることしか出来なかったが、お陰で緊張感はいくらかほぐれた。
そして、高速から降りて行くと景色はどんどんビル街から畑や緑が多い場所に変わっていき。竹林が見えて来ると、笑也は迷うことなくその道を進んでいく。
「この先が、僕の実家だよ」
「……お家っていうか、郊外のお屋敷みたいな気がしてきたんですけど」
「当たり。でも、二階建てでもちょっと広いだけだよ 使用人も少ないし」
「ちょっと? 使用人さんがいるのに?」
「ま、もうすぐ着くから」
色々ツッコミたいところが多かったが、もうすぐ着くと言われた時に前方がまぶしく光り出して来て。
開けた場所に着いた途端、そのお屋敷が目に飛び込んできた。
「……わあ」
駐車場に到着しても、穫は開いた口が塞がらなかった。
それくらい、テレビなんかでしか見たことがないような和の豪邸の大きさに圧倒されたからだ。
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