イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

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21-1.達川家では(???視点)

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 *・*・*(???視点)








 息子が久しぶりに会いにくる。

 しかも、恋人になったと言う女性を連れてくると。


「…………見合いをさせる必要はなかったわね」


 達川たちかわの現当主、珠緒たまおはスマホを持ちながらゆるりと口元に弧を描いた。見ていたのはメールで送り主は息子本人。こちらに来る日取りを提案してきたものだ。

 だからデスクに使っている文机ふづくえに載せていた数冊のお見合い写真などは、もう必要がないと軽く触れてから使用人を呼んだ。


「悪いけれど、こちらはもう必要なくなったわ」
「処分ですか?」
「そうね? あちらにも申し訳ないと伝えて」
「かしこまりました」


 結界師としての、万乗ばんじょう家については少ししか交流がなかったが。

 息子が選んだ相手は、当主ではなく分家の分家筋。

 しかし、当主以上の加護の持ち主だそうだ。加えて、十束とつかのつるぎの継承者と聞いた。

 ならば、息子の当主継承を快く思わない分家達も何も言えまい。

 珠緒はそれもあるが、息子が想う相手をきちんと選んだのだから親としては安心していたのだ。

 万乗みのりと言う女性はまだ大学生らしいが、つい先日成人したらしい。なら、少々飲みの席を設けてもいいだろうか。


「ふふ。私らしくないわね? そわそわしているわ」


 無理もない。

 今こそ親元から離れて、イタコとしても社会人としても生活している息子に、初めての恋人だ。しかも、将来のことを考えている相手を紹介したいだなんて、今まで一度も言ってこなかった。

 だから、普通の親のようにそわそわしてしまう。


「珠緒さん、楽しそうだね?」
「あら、明良あきらさん」


 笑也えみやの父親であり、珠緒の夫がやってきた。

 還暦まであと数年に迫っているのに、皺も目立たず相変わらず美しい。笑也は彼と顔が瓜二つなのだ。


「見合い写真を処分していたようだけど、笑也が来る日が決まりそうかな?」
「ええ。三日後にどうかと……大神おおみかみもいらっしゃるそうよ?」
「笑也が独立してから、ほとんど向こうに行かれてしまっているからね?」
「そうね。……本当に」


 イタコとしての能力に技術。

 次期当主の継承権をきちんと所持出来た笑也がこの家を出て、もう三年くらい経つ。

 もちろん、珠緒が時々エミを降ろす機会はあるが、大抵彼女は笑也のところにいるのだ。エミや他の大神や神霊にあやかしが好む料理を馳走するがために。

 あの真実に気づいたのも笑也自身だ。気に入って当然だろう。


「写真は見せてもらえるのかな?」
「ええ。少し待って?」


 文机に置いたスマホを手に取り、ささっと操作してから明良の方に見せてやった。


「……ほう? 随分と可愛いらしいお嬢さんだね?」
「ええ。是非、娘に来て欲しいわ」


 笑也から送られた写真は、穫が成人した日の誕生会の時のもの。

 ろうそくの火を消して、笑顔になった時のだった。
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