イタコ(?)さんと神様は、インスタント食品がお好きだそうな?

櫛田こころ

文字の大きさ
上 下
108 / 168

20-4.ほうれん草のクリームコロッケ②

しおりを挟む





 *・*・*










 エミ達はどこかに行っていたのだろうか。

 神様の服装のままで、かなりくたびれているようにも見えたが。

 エミは、悩ましげに体を起こすとテーブルの上にある料理を見てから、目を輝かせたのだった。


【なあに、なあに!? コロッケぇ? 冷凍コロッケなのん!!?】
「全然違うよ、エミ。みのりちゃん家直伝の手作りクリームコロッケ」
【んま!? たーべーたーいー!!】
「じゃあ、僕に降りて。人数分しか用意してないんだから」
【おぅけぇい!】


 と言うわけで、エミは笑也えみやに憑いて。他の二神は服装を変えてから、人間みたいに実体化したのだった。


「どうぞ。ほうれん草入りのクリームコロッケです」
「「「「「「「「いただきます!!」」」」」」」」


 メインがクリームコロッケなので、佐和さわにはコンソメの野菜スープを作ってもらったが。予想以上に優しい味わいで美味しかった。

 夜だが、クリームコロッケなのでパンで食べることにしたのは正解だった。ひとり二個用意出来たクリームコロッケを、一個は普通に。もう一個は食パンに乗せて軽く潰してから挟むように食べれば、幸せが口いっぱいに広がって行く。


「みのりん、美味しいわ~~!!」


 笑也に憑いたエミは、上機嫌でクリームコロッケを食べてくれていた。穫がパンとの食べ方を教えれば、すぐに実行してくれるくらいに。


「美味ですね? こう言う感じのコロッケはあまり食べたことがありませんが、味付けはシンプルに塩胡椒とバターのみ。なのにこの味わいは絶品ですよ」
「うむ。美味い」


 月詠つくよみ達も気に入ってくれたようで何よりだ。パンの方の食べ方を実行した時には、顔が『カッ』となるくらい変わってしまって微笑ましく感じた。

 ほうれん草の癖と青味は少し気になる程度だが、ホワイトソースのコクと味わいであまり気にならない。そこにウスターソースをかければ、ピリッとした辛味と合わさってなんとも言えない。

 二個だなんてあっと言う間に終わってしまい、これはまた作って欲しいとエミにリクエストされた。


「さて、みのりん?」


 穫が佐和と片付けを終わらせてから、エミが話を切り出してきた。


「率直に言うわ」
「はい」
「……あの八岐大蛇ヤマタノオロチの尾と戦ってきたのよん」
「え」
「苦戦はしましたが、須佐すさが切り込んでくれたおかげで、消滅しました」
「…………」
「ええ!?」


 穫が笑也とデートをしている間に、彼らが退治してくれた。

 もう大丈夫だと分かると、穫は体の力が抜けてソファから落ちそうになった。間一髪で、咲夜さくやが抱えてくれたが。


「まだ懸念事項はあるけど~? 昨日みたいにいきなり魂を抜き取られることはないと思うわん?」
「エミ氏、懸念事項と言うのは?」


 佐和が聞くと、エミは『ふーっ』と息を吐いた。


「……あっさり過ぎたのよん」
「あっさり?」
「あたしと月詠がかけた封印を解いた癖して……地獄で戦ったのに、再生云々はあったけど須佐が草薙剣くさなぎのつるぎで斬り伏せただけで終わった。そこが……いくらなんでもおかしいのよん?」
「……俺も思った。やけにあっさりだった……と」
「だーかーらー、いきなりはないとは思ってもまだ油断出来ないわけ」


 日本の最高の位にいる神々でも、まだ確定とは言えないだなんて。

 穫を、欲しいとか言っていたあの八岐大蛇の尾と言う存在は。

 穫に、何を求めるのだろうか。あるとすれば、今も隣にいる咲夜のことしかないと思う。


「もし……」
「うん?」
「もし……私じゃなくて咲夜が狙いなら、私は渡しません! 咲夜は私の家族なんですから!」
「……穫」
「絶対、悪いことに利用だなんてさせません!」
「その意気よん、みのりん?」


 だから、穫も守られているばかりには行かないのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

博士の愛しき発明品たち!

夏夜やもり
キャラ文芸
 近年まで、私と妹は常識的でゆるやかな日常を送っていました。  しかし、ご近所に住む博士の発明品で、世界と一緒に振り回されてしまいます!  そんなお話。あと斉藤さん。 【あらすじ】  氏名・年齢・性別などを問われたとき、かならず『ひみつ』と答える私は、本物の科学者と出会った!  博士は、その恐るべき科学力と体をなげうつ研究努力と独自理論によって、悍ましき発明品を次々生み出し、世界と私たちの日常を脅かす!  そんな博士と私と妹たちで繰り広げるS・Fの深淵を、共に覗きましょう。 **――――― 「ねえ、これ気になるんだけど?」  居間のソファーですっごい姿勢の妹が、適当に取り繕った『あらすじ』をひらひらさせる。 「なこが?」 「色々あるけどさ……SFってのはおこがましいんじゃない?」 「S・F(サイエンス・ファンキー)だから良いのだよ?」 「……イカレた科学?」 「イカした科学!」  少しだけ妹に同意しているが、それは胸にしまっておく。 「文句があるなら自分もお勧めしてよ」  私は少し唇尖らせ、妹に促す。 「んー、暇つぶしには最適! あたしや博士に興味があって、お暇な時にお読みください!」 「私は?」 「本編で邪魔ってくらい語るでしょ?」 「…………」  えっとね、私、これでも頑張ってますよ? いろいろ沸き上がる感情を抑えつつ……。                                      本編へつづく *)小説家になろうさん・エブリスタさんにも同時投稿です。

その捕虜は牢屋から離れたくない

さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。 というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

後宮の隠れ薬師は、ため息をつく~花果根茎に毒は有り~

絹乃
キャラ文芸
陸翠鈴(ルーツイリン)は年をごまかして、後宮の宮女となった。姉の仇を討つためだ。薬師なので薬草と毒の知識はある。だが翠鈴が後宮に潜りこんだことがばれては、仇が討てなくなる。翠鈴は目立たぬように司燈(しとう)の仕事をこなしていた。ある日、桃莉(タオリィ)公主に毒が盛られた。幼い公主を救うため、翠鈴は薬師として動く。力を貸してくれるのは、美貌の宦官である松光柳(ソンクアンリュウ)。翠鈴は苦しむ桃莉公主を助け、犯人を見つけ出す。※表紙はminatoさまのフリー素材をお借りしています。※中国の複数の王朝を参考にしているので、制度などはオリジナル設定となります。 ※第7回キャラ文芸大賞、後宮賞を受賞しました。ありがとうございます。

美しいものを好むはずのあやかしが選んだのは、私を殺そうとした片割れでした。でも、そのおかげで運命の人の花嫁になれました

珠宮さくら
キャラ文芸
天神林美桜の世界は、あやかしと人間が暮らしていた。人間として生まれた美桜は、しきたりの厳しい家で育ったが、どこの家も娘に生まれた者に特に厳しくすることまではしらなかった。 その言いつけを美桜は守り続けたが、片割れの妹は破り続けてばかりいた。 美しいものを好むあやかしの花嫁となれば、血に連なる一族が幸せになれることを約束される。 だけど、そんなことより妹はしきたりのせいで、似合わないもしないものしか着られないことに不満を募らせ、同じ顔の姉がいるせいだと思い込んだことで、とんでもない事が起こってしまう。

ピアニストの転生〜コンクールで優勝した美人女子大生はおじいちゃんの転生体でした〜

花野りら
キャラ文芸
高校生ピアニストのミサオは、コンクールで美人女子大生ソフィアと出会う。 眠りながらラフマニノフを演奏する彼女は、なんと、おじいちゃんの転生体だった! 美しいピアノの旋律と幻想的なEDMがつむぎあった時、それぞれの人間ドラマが精巧なパズルのように組み合わさっていく。 ちょっぴりラブコメ、ほんのりシリアスなローファンタジー小説。

麻布十番の妖遊戯

酒処のん平
キャラ文芸
麻布十番の三叉路に、夜な夜な現れる古民家がある。 彼らは江戸より前からこの世に住み、人に紛れて毎日を楽しんでいた。 しかし、そんな彼らも長くこの世に居過ぎたせいか、 少々人の世にも飽きてきた。 そんなときに見つけた新しい楽しみ。 【人】ではなく、【霊】を相手にすることだった。 彷徨える霊の恨みをきれいさっぱり取り祓うかわりに 死に樣を話してくれと。 それを肴に話に花を咲かせたい。 新しい遊戯を発見した彼らが出会う【霊】とはいかなるものか。

処理中です...