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20-2.大事な友達
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皆へのお土産もたっぷり買ってから、穫は笑也とのドライブデートを楽しんだ。
高速を使う時は、彼の空いてる手を握ったりと少しいちゃつきながら。こんな穏やかで素敵な日を送れるようになるだなんて思わなかった。
だから、今が素敵で素敵過ぎて。
笑也が時々笑顔を向けてくれるのが、確信犯だと思うくらい。
そんな何気ないことが、幸せ過ぎて。
昨日、ある意味死にかけたことだなんてすっかり忘れてしまってた。
だけど、思い出しても今は笑也に言うことはやめておいた。
今朝一緒に起きた時も、決めたのだ。弱くても負けるわけにはいかない。その心意気が大事なのだと。
とりあえず、夕飯は家でのんびりしようと材料だけ買いに行ってからマンションに戻り。
咲夜と羅衣鬼には荷物持ちになってもらってから、フロントに到着すると。巧が朝と同じようににやけた笑顔で受付に立っていた。
「おかえり」
「ただいま戻りました! お土産買ってきたんです!!」
「わざわざええのに。……あ、佐和ちゃんはまだ俺の部屋におるで?」
「……大丈夫でしたか?」
「おん。体力気力に問題は無いけど、結構消費したらしいからな? 何回か起きたけど、飯食ったら寝るの繰り返しだけや」
「……今行ってもいいですか?」
「おん。笑也、連れてったり?」
「そうするよ」
咲夜達には、荷物だけをお願いして笑也と一緒に巧の部屋に向かう。巧の部屋は管理人も兼ねているから一階、しかも残りスペース全部が彼の部屋だ。オーナーが彼の実家なので、そこだけは身内の特権らしい。
スペアのカードキーを笑也が取り出して開ければ、佐和がいるらしいのに人の気配はないように見えた。笑也や穫とは違う和風モダンスタイルの部屋にはまだ一回しか入ったことがない。
最初は、引っ越ししてきたと同時の挨拶しに来た時だ。
「佐和ちゃん?」
玄関から声をかけても、佐和からの返事がない。
笑也が巧の寝室に行ってノックをしても返事がないので、ゆっくりと開ければ。
小さな寝息を立てて、ぐっすりとベッドで眠っている佐和が見えた。その様子にほっと出来たが、穫はベッドから垂れている彼女の手を掴んで、載せてやった。
「……ありがとう、助けてくれて」
エミもだが、佐和がいなければ穫は笑也の元へ帰ってくることが出来なかった。本当に、呪怨の時もだが迷惑をかけてばかりなのに。この少女は本当に優しい。
「起きたら、琴波さんの好きなもの作ってあげたら?」
「そうします」
今ある材料だと何が出来るだろうか。
それを考えながら、穫は佐和の髪を撫でてやった。
「……ん?」
と同時に、佐和が目を開けた。
寝ぼけ眼だったが、目をキョロキョロさせてから穫を見つけると、にっと口元を緩めた。
「……楽しかったかい?」
「うん! 佐和ちゃんも今度一緒に遊ぼう?」
「おやおや、達川氏の隣よりも優先してくれるのかい?」
「友達は別」
「くふふ」
何が食べたいか聞くと。
クリームコロッケと答えられたので、三人で笑也の部屋に移動して夕飯を作ることにしたのだった。
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